男系固執派が主張する「合理的な理由」
なぜそんな雑な法案が通ってしまったのかと言うと、国会内を「LGBTに理解を示さなければいけませんからね」という空気が支配し、与野党とも「我々、こうして話し合いましたよね」という合意をとることだけが目的となってしまったからだと言われている。
こういうわけで、LGBT法は、差別したい自称保守派からも、差別をなくしたい左派からも、当事者団体からも批判されるという雑すぎるものに仕上がってしまったというわけだ。
結局、LGBTの理解を促進しようと言う国会議員たちのなかに、そもそもLGBTのことも、法律のことも、理解できている人間がほとんどいなかったということでもある。
さて、竹田恒泰はと言うと、動画のなかでこう語っている。
公共の利益に反していれば制限されるんです。これは差別ではないわけです。
「なぜ天皇がなんで男なの?」「なんで男系なの?」理由があるわけです。合理的な理由が。だから差別でもなんでもない。
そういうことを言うなら、一般国民が天皇になれないことを差別と言うべきですよね。だって1億2,000万人近くが皇族になれない、天皇になれないんですよ。そっちのほうが差別ですよね。女性皇族だけが天皇になれないのを差別というのはおかしな話なんで。
男系固執に「合理的な理由」があるとは知らなかった!
…って、どこにあるの?
ひたすら皇室の未来を先細らせ、まったく皇統問題解決にならない非合理なことばかり言っているのが男系固執派のお家芸なのだと思っていたが。
「一般国民が天皇になれない」ということを差別と言うが、現実には、一切の自由のない状況におかれて、国民のために身を尽くして一生を過ごされる天皇陛下はじめ皇室の方々のほうが、差別されて人権侵害を受けていると言える状況だ。
ほとんどの発言を封じられている天皇と違って、好き勝手なことをYouTubeやらテレビやらツイッターやらで言い散らかして、気に入らない奴が出てきたら、スラップ訴訟しながら生きている竹田は、自分が「天皇になれない」から「差別されている」と感じるのだろうか?天皇になりたいマンなのか?
自分の男尊女卑を矮小化するために、大きな差別の話を持ち出してかく乱しているとしか思えない。
安倍さんの目が黒かったら絶対(LGBT法は)通んないですからね。自民党、おかしいよ。これにひょいひょいと乗っちゃうような人は、「時代が変わった、女性でも天皇になれるよね」と言う人たちですからね。だから、今の自民党に任せていたら、皇室は守ってもらえるとはもう思えないです。
そりゃ安倍晋三は統一協会とベッタリだったのだから、生きていれば、LGBT法は条文の修正どころか絶対に通さないという睨みをきかせたことだろう。女性宮家創設の議論を握りつぶして白紙にしたのと同じように。
しかし、竹田の自民党に対する危機感や、どんどん支離滅裂になっていく屁理屈を聞いていると、逆に、愛子皇太子誕生に動くタイミングが、近く巡ってくるのかもしれないという希望も見えた気がしてきた。
国会議員たちが憲法や法律をまったく理解していないことによって、「旧宮家の男系男子を養子縁組」だの「女性皇族は結婚して民間に下られた後も公務をしていただく」だの実現不能な机上の空論で空転し続けている状態を、早く打破してしまいたいが、男系固執派は、終わりのはじまりを迎えているのは確かなようだ。
(『小林よしのりライジング』2023年7月11日号より一部抜粋・文中敬称略)

2023年7月11日号の小林よしのりさんコラムは「『よしりん辻説法〈6〉 恋愛論・完』とLGBT法」。ご興味をお持ちの方はこの機会にご登録ください。
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