プーチンの親友エルドアン
では、プーチンは、なぜウクライナを支援するエルドアンと仲がいいのでしょうか?
話は2016年まで遡ります。エルドアンが、欧米、特にアメリカを嫌いになり、ロシアに接近するきっかけになった事件があります。それが2016年7月15日に起こった「クーデター未遂事件」。トルコ軍の一部が、エルドアンに対し反乱を起こしたのです。
クーデターは失敗し、軍関係者、司法関係者約7,500人が逮捕されました。そして、警察官約7,900人、公務員約8,700人が解雇されました。
このクーデターの黒幕とされているのが、フェトフラー・ギュレンという男です。ギュレンは1960年末頃、「ギュレン運動」という社会運動をはじめました。ギュレンは、教育機関を建設したり、トルコ文化を普及たり、宗教間の対話を呼びかけたり、貧困層への支援を行っていた。2016年のクーデターに参加した人たちの多くが「ギュレンの支持者」だったとのこと。
ところで、ギュレンは、アメリカ在住です。エルドアンは、アメリカに、「ギュレンの引き渡し」を要求しました。ところが、アメリカ政府は引き渡しを拒否し、トルコとアメリカの関係は、大いに悪化したのです。ちなみにトルコの内相は、「アメリカがクーデターの黒幕だ!」と主張しています。ロイター2021年2月5日。
トルコのソイル内相は4日、2016年に同国で起きたクーデター未遂事件について、背後に米国が存在していたとの認識を示した。地元紙ヒュリエットが報じた。
ソイル内相は「7月15日の背後に米国の存在があったことは非常に明らかだ。(ギュレン師のネットワーク)FETOが彼らの指示を受けて実行した」と述べた。
内相が、「アメリカがクーデターの黒幕」といっている。ということは、エルドアン自身もそう思っている可能性が高いでしょう。
エルドアンが「アメリカが起こした」と思っているクーデター未遂が2016年。ここからエルドアンは、露骨にアメリカに反抗するようになっていきます。
たとえば、アメリカの同盟国でありながら、ロシアから武器を買っている。2017年、エルドアンは、ロシアから地対空ミサイル「S400」を購入することを決めました。
そして、トルコは、スウェーデンがNATOに加盟することに反対しています。スウェーデンが、トルコからの分離独立を主張するクルド労働者党(PKK)の難民を匿っているからです。これは、トルコ側の事情ですが、プーチンから見ると、「エルドアンのおかげで、NATO拡大が阻止されている」となります。
いずれにしてもプーチンは、「エルドアンは、NATO分断を引き起こせる男」として大切にしているのです。プーチンにとってエルドアンは、ただの「独裁者仲間」ではない。NATOを破壊するための「戦略的パートナーといえるでしょう。