2020年にとある機関が世界で実施した人助けに関する調査で、ダントツの最下位を記録した日本。このような社会となってしまった要因は、一体どこにあるのでしょうか。今回のメルマガ『冷泉彰彦のプリンストン通信』では米国在住作家の冷泉彰彦さんが、日本人を「人助け下手」している原因を2つ上げ、各々についての考察を展開。その上で、解決法を社会全体で考える必要性を訴えています。
※本記事は有料メルマガ『冷泉彰彦のプリンストン通信』2023年7月18日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。
「人助け」が下手な日本人
チャリティー機関「チャリティーズ・エイド・ファンデーション(CAF)」は2009年から「この1ヶ月の間に、見知らぬ人を助けたか」、「この1ヶ月の間に寄付をしたか」、「この1ヶ月の間にボランティアをしたか」という3つの項目について、世界の国々で行われたインタビューをベースに国の寛容度を採点しているそうです。
その報告書では、2020年、アメリカの市場調査のプロ集団であるギャラップ社が、114カ国にわたる12万人以上を対象に電話インタビューを行って調査したデータをベースにして分析が行われているとされています。
報道によれば、このCAFのレポートでは、日本は大差で最下位だそうです。まず、総合順位で最下位であるだけでなく、僅差ではなく、大差で最下位なのだそうです。更に言えば、2018年度に行われた調査のスコアから大きくポイントを落としているというデータも指摘されています。
これでは、まるで日本がダメな国ということになります。一部には、日本人は顔見知りには親切だが、見知らぬ人には冷たいというカルチャーがあるとか、福祉は国の仕事であって日本人はカネを出さないとかいう「解説」があります。この点については、私は違うと思います。
では、日本のカルチャーだから仕方ない、これでいいということかというと、それも違うと思います。事態は明らかに悪いのであって、何とかしないといけません。そのためには、原因の核にあるものを確認することが大切です。
原因は2つあります。
1つは、現在の日本社会では「初対面の人同士がスムーズに意思疎通するための日本語」が壊れてしまっているという問題があります。そこには日本語の特質が絡んでいます。
日本語は、関係性の言語であり、ロジックや情報を伝える機能に比べて関係性を確認する機能が大量に盛り込まれています。例えば、道を歩いていて、重い荷物を抱えて困っている人がいたとします。初対面だが、困っているので助けてあげようと考えたとして、一体その人にまず「どんな声掛けをするか」という問題があります。
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