ウクライナの状況
F-16戦闘機の訓練を行う西側プログラムに参加するウクライナ人パイロット8人が選ばれたが、訓練開始日はまだ決まっていない。さらに英語が多少できる20名は今月から語学コースを開始できる見込みであり、さらに32名を訓練予備軍に指名した。ウ軍は、早くF-16が欲しい。
しかし、デンマークも退役するF-16を、アルゼンチンに売却することが決まり、ウ軍への供与はなくなったようである。次にオランダとベルギーのF-16がF-35と入れ替えになるが、このF-16の供与になるのであろうか。
そして、5月のゼレンスキー大統領のベルリン訪問後、約束された110両のレオパルド1戦車のうち引き渡されたのはわずか10両のみで、20台のマーダー歩兵戦闘車とアイリス-T防空システムはまったく引き渡されていない。というように、西欧の「ウクライナ支援疲れ」が見えてきている。ドイツではウクライナ支援を止めるという政党の支持率が上昇している。
ウ軍が機甲戦から消耗戦にシフトしたことで、戦車より弾薬の方が優先度が高くなってきたことにもよるが、トルコからウクライナはDPICMクラスター弾の供与を受けている。もう1つが、防空システムであり、リトアニアがNASAMS発射装置をウクライナに供与のようだ。
その上、ブルガリアは、ウクライナへの装甲兵員輸送車ほぼ100台の供与が決まった。ロシアの脅威を感じる東欧諸国の供与が多くある。
ウクライナは、8月5日~6日のサウジで開催される和平会議で、グローバル・サウスの支持を得る方向で、準備をしている。40カ国が参加予定で、中国も参加する。
もう1つが、停戦・和平後のウクライナの安全保障の協定作りを開始した。まず、米国との間で行うが、そこでの協議で決まったことをEU全体にも拡大する思惑であろう。この戦争の終わり方に米EU共に目を向き始めている。
西欧の「ウクライナ支援疲れ」や2024年11月の米国大統領選挙でトランプ大統領が当選すると、ウクライナも米国の援助を受けられなくなることも考慮する必要があるからだ。
その上、ポーランドとの関係もおかしくなっている。ウクライナの穀物をリトアニアの港から積み出すことが決まり、ポーランドを貨物列車で通過するだけであるのに、ポーランドはウクライナ産穀物の自国内への持ち込みを拒否した。
これに対して、ウクライナ外務省は、ポーランドの拒否はおかしいと述べたが、ポーランド政府はポーランド農民の利益のためにそうするという。
ポーランドとしても、ウクライナ産穀物が輸出できないことで国際穀物価格が上昇することを望んでいることがわかる。
ということで、リトアニアの港の利用もできないことになった。
ウクライナ産穀物の輸出阻止は、ロシアだけではなく、ポーランドなどのEUの農業国も望んでいることがわかる。
トルコのエルドアン大統領も、プーチンと話し穀物合意への復帰を持ちかけたが、条件が整えば、復帰するという。
ロ農業銀行へのSWIFT接続が条件であり、ウクライナもその条件を飲むしかないと思われたが、その途端に、イスラエル船など6隻がウクライナの港に到着した。
ロ海軍は、黒海で、ウクライナに向かう船を攻撃するとしたが、ウ軍の水上、水中ドローンの攻撃を受けるので、手出しができなかったようである。トルコ海軍艦艇もいるし、トルコとの関係も悪くなり、ロ海軍は、口だけの攻撃しかできないようである。
一方、ウクライナでのドローン技術が発展して、モスクワの特定ビルにドローンを2度も突入させている。空中ドローン「ビーバー」の航続距離は、1,000km程度であり、モスクワに到達可能である。
ノボロシスクのロ海軍基地まで届く、水中ドローン「マリッチカ」も開発した。
S200ミサイルを地対地ミサイルと活用して、ロシア領内を攻撃している。この戦争でウクライナの軍事技術は大きく進展している。ソ連時代の一大軍事産業地域だけはある。その開発スピードも早い。
それでも、長期の消耗戦になると、ウクライナが不利になる。ロシアの防衛産業の規模は、西側全体の防衛生産量を仰臥している。このため、ウクライナに支援できる量もロシアが使用できる量と比べると少なくなる。
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