危機に瀕するウクライナ。長期の消耗戦へ突入でロシアに傾く戦況

 

ロシアの状況

ロ国防省は、ベルゴルド州とクルスク州の領土防衛隊に武器と車両を供与したが、武器は猟銃であるという。プーチンは、領土防衛隊が反乱することを恐れているのであり、チェチェンのアフマド軍をベルゴルド州の国境に配備したが、地元民の家に押し入り、その家の住民を追い出している。

このため、領土防衛隊を組織しているが、これは反乱のリスクがあるということで、プーチンに忠誠を誓うチェチェンのアフマド軍を使うことになる。すると、狼藉をチェチェン軍はするので評判が悪い。このため、反乱のリスクも高まるということになる。

一方、ウ軍参謀本部は、ロ軍が同国の戦闘損失の規模を隠すために自らの死者を焼いているとし、ロ軍はザポリージャ州メリトポリに火葬場を設置したという。ロ軍内では負け戦であることを認識され始めている。ロ軍は手一杯で、兵站、物資、人員、武器に問題を抱えている。特にウ軍の後方補給拠点への攻撃で物資が足りない。

このため、ウ南軍報道官のフメニュク氏は、ロシア占領軍・政府の家族や財産はすでにクリミアから避難している。これらはすべて、ロシア上層部が将来の和平交渉の準備をすでに整えていることを示す兆候だという。

負け始めたロシアは、ベラルーシに対して「スバウキ回廊」への攻撃を指示しているのはないかということで、ポーランドとラトビアは、ベラルーシとの国境の防衛を強化している。そして、ワグナー軍が、スバウキ回廊付近にいることである。

ロ軍は人員不足であり、早く追加の動員をしないと前線が維持できない。しかし、7月29日から8月2日までの5日間で、ロシア国内の徴兵事務所や関連施設への放火や放火未遂が少なくとも28件発生した。ロ情報機関「連邦保安局FSB」職員を名乗る人物から電話で放火を強要されたともいうが、この裏には国民の動員に対する嫌悪感が大きいことも分かる。

そして、今年の国防予算は当初4兆9,800億ルーブル(540億ドル)から9兆7,000億ルーブル(1,050億ドル)に倍増し、国防予算は国家予算全体の3分の1である。

戦闘における「ロシア劣勢」との報道、民間軍事会社ワグネルの武装蜂起などをきっかけに、ルーブルの下落が止まらず、対ドル94ルーブル、対ユーロ105ルーブルになっている。

ロシア中央銀行は、自国通貨の下落によって輸入物価はさらに上昇し、インフレ懸念が高まる展開を懸念し、7月21日、予想外の大幅利上げで8.50%にした。

その上、ロシアから海外へ、ヒト・モノ・カネの流出は増加している。ヒトは100万人も流出した。それによっても通貨安になり、輸入物価は上昇している。

しかし、「プーチンは、トランプが自分を助けてくれることを知っている。来年の米国選挙は事態を複雑にする。プーチンによれば、トランプが勝てば、ウクライナへの政治的支援は損なわれる」とダニエル・フリード前駐ポーランド米国大使は言うが、2024年大統領選挙で、トランプが選挙に出られないように、または選挙で勝たないように、バイデン政権は、国会議事堂襲撃事件などの訴訟を起こしている。

これに対して、トランプ前大統領は、2021年1月6日の国会議事堂暴動と2020年の大統領選挙を覆すための捜査に関連した連邦政府への無罪申し立てをした後、多くの法廷闘争に時間と費用を費やしている状況に不満を漏らし、最高裁による「仲裁」を求めた。

このようなトランプ氏の行為に対して、トランプ氏の弁護士ジョン・ラウロ氏は、トランプ氏がマイク・ペンス氏に法律を破るよう圧力をかけたことを認めた。ペンス氏もトランプ氏は大統領選挙に出るべきではないと言っている。

しかし、トランプ当選の希望がある限り、ロシアは戦争を止めないことも確かである。2024年11月までは続くことになる。

さあ、どうなりますか?

(『国際戦略コラム有料版』2023年8月7日号より一部抜粋、続きはご登録の上お楽しみください。初月無料です)

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