元お天気お姉さんが解説。なぜ台風は「強く、遅く」なったのか?

 

日本に接近する台風の強度が高まってることは、気象研究所の分析でも明らかにされています。1980年~1999年と2000年~2019年に日本列島に接近した台風を比較した結果、中心気圧が980ヘクトパスカル以下で接近する台風は2.5倍に。さらに、太平洋岸に接近する台風は1.52倍に増えていました。

日本列島の太平洋岸の水温が上昇していることと、日本の夏の天気の主役の太平洋高気圧の張り出しが強まっていることが、大きな理由です。

台風は猛烈なエネルギーを持っているのに、自分だけで動くのはめちゃくちゃ苦手です。スピードを出すには太平洋高気圧の縁を回るか、偏西風に乗るかの二択のみ。どちらも近くになければ、ふらふらと迷走するしかないのです。

一方で、日本に上陸したあとは通常でしたら偏西風に乗るため、猛烈にスピードアップするのが「それまでの普通」でした。が、2000年代に入ってから温暖化の影響で、偏西風は北上。日本列島に上陸しても偏西風に届きません。最近の台風の動きが鈍いのは、このためです。2019年10月に東日本に大きな被害をもたらした台風19号の平均速度も、平年値より約4割遅くなっていました。

また、気象研究所などの研究グループが、多数の数値シミュレーションを用いて、地球温暖化に伴う台風の移動速度の将来変化を予測したところ、今世紀末には、日本の位置する中緯度を通過する台風の移動速度が、約10%遅くなることがわかったとする論文が、国際的科学誌「Nature Communications」に掲載されています。

気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第5次評価報告書等でも、地球温暖化の進行とともに、台風の最大風速や降水量が強まる可能性が高いことが示されています。つまり、どこからどう考えても、台風は危険になる。「見たことがない!」レベルが相次ぐようになり、雨の量も、風の強さも、私たちの想定を超える危険なものになってしまうのです。

台風の季節は10月まで続きます。今後、台風の接近・上陸が予想される時は、「迷わず、早めの避難」を徹底してください。みなさんの台風の経験談などありましたら。お聞かせください。

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