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いまの中国経済を、かつての日本と比べるのは早計

中国経済はいま、一時の勢いを失い、全体的にどんよりとした空気に包まれている。それは中国人が少なくとも以前ほど自らの未来を信じられていないからで、財布の紐も硬い。コロナから体調が戻りきらないなかでの米中対立や長期的な展望を曇らせる未来の人口減少や高齢化という悩みもある。ネットではいま「中国も日本の『失われた30年』と同じ道を歩み始めた」との議論も盛んだ。

だが、かつての日本と比べるのは早計だ。バブル崩壊の後にIT化の波に乗り遅れた日本とは違い、強い産業が多く育ち、技術革新も凄まじい勢いで進んでいる。象徴的なのは電気自動車(EV)だ。今年から日本を抜いて最大の自動車輸出国になった。今後世界の自動車市場がEVへと向かうなかで、車載電池から資源まで圧倒的な強みを持つ中国が、その地位を固めてゆくことは間違いない。

ITではアリババ、テンセント、バイドゥなど巨人がそろい、ファーウェイ、OPPOに代表される通信分野での存在感はいまさら言うまでもない。そして太陽光発電や風力発電など新エネルギー分野では、発電量だけでなく設備の製造輸出でもシェアを拡大し続けている。加えてドローン、造船、海運、宇宙産業、ロボット、量子コンピュータから農業まで、躍進の話題には事欠かない。

問題があるとすれば、こうした分野の多くを国有セクターが担っている点だ。停滞気味の製造業や不動産業などオールドエコノミーの領域には民間企業が多く、典型的な国進民退の傾向を示している。そうであれば当然、富の偏在が起き、「共同富裕」をどう実現するのかが次の課題となる。この問題は若年層の失業率の問題と密接にリンクし、いうまでもなく学生は国有企業に殺到している。

最後に対米輸出での「首位陥落」問題だ。2023年1~6月、アメリカの中国からの輸入(モノ)は2029億ドルと前年同期比で約25%も減少。輸入額全体に占める割合も13.3%と中国に代わりトップとなったメキシコ(15.5%)との差が顕著となった。中国はカナダにも抜かれ3位となった。

だが、これを中国の対外貿易の弱さや米中対立から説明することは正しくない──
(『富坂聰の「目からうろこの中国解説」』2023年8月20日号より一部抜粋、続きはご登録の上お楽しみください。初月無料です)

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1964年、愛知県生まれ。拓殖大学海外事情研究所教授。ジャーナリスト。北京大学中文系中退。『週刊ポスト』、『週刊文春』記者を経て独立。1994年、第一回21世紀国際ノンフィクション大賞(現在の小学館ノンフィクション大賞)優秀作を「龍の『伝人』たち」で受賞。著書には「中国の地下経済」「中国人民解放軍の内幕」(ともに文春新書)、「中国マネーの正体」(PHPビジネス新書)、「習近平と中国の終焉」(角川SSC新書)、「間違いだらけの対中国戦略」(新人物往来社)、「中国という大難」(新潮文庫)、「中国の論点」(角川Oneテーマ21)、「トランプVS習近平」(角川書店)、「中国がいつまでたっても崩壊しない7つの理由」や「反中亡国論」(ビジネス社)がある。

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