恒大の次は碧桂園ショック?中国不動産の“出血”が想定より多量になったワケ

Hong,Kong,,China,-,April,26,,2022:,City,Street,View
 

恒大集団の破産申請や若年層の失業率の悪化など、中国の苦境を伝えるニュースに、なぜか喜色を滲ませる日本人。「中国も日本の『失われた30年』を歩み始めた」などの声に、「それは早計」と冷静な分析を展開するのは、多くの中国関連書を執筆している拓殖大学の富坂聰教授です。今回のメルマガ『富坂聰の「目からうろこの中国解説」』では、中国政府による不動産業界へのテコ入れの背景と想定以上の“出血”となった理由や、“大卒”若年層の失業率と人手不足のミスマッチを指摘。IT化に遅れた日本のバブル後との違いについては、EVを筆頭に最先端分野での躍進があると伝えています。

不動産業界の不振と若年層の失業。加えて対米輸出で首位陥落の中国の現状は、日本の「失われた30年」の入り口なのか

日本では再び「中国経済大崩壊」の声がかまびすしい。もともと日本人はこの話題が大好物だが、今月発表された中国の経済統計が振るわず、20%を超えるとされる若者の失業率の発表を、当局が「一時的に停止」したことで「ヤバい」という空気が広がった。これに不動産大手の経営不振のニュースが追い打ちをかけたという流れである。

巨額の債務を抱えてデフォルト(債務不履行)に陥っていた中国不動産開発大手の恒大集団(エバーグランデ・グループ)が、アメリカの連邦破産法15条の適用を申請したのに続き、売上高基準で中国最大の不動産開発企業である碧桂園(カントリーガーデン)も外貨建て社債の利払いを実行できず、国内債券の取引を停止した。

伸び悩む輸出では、ついにアメリカ向けで「15年ぶりに首位から陥落」したというニュースも駆けめぐった。確かに悪い話ばかりで発足したての中国の新政権には、まさに踏んだり蹴ったりの状況だ。

アメリカのウォリー・アデエモ米財務副長官は8月16日、「中国の経済問題は米国と世界経済にとって逆風」としたうえで、それは「自らの政策選択が招いた結果」と批判。逆にアメリカの経済成長を「われわれが行った『政策選択』によるもの」と誇ってみせた。

ただ本メルマガの読者ならば既知のことだが、それぞれの問題について細かく見て判断しなければ、実態との乖離は避けられない。例えば若年層の失業率の高さだ。これは、単純に仕事がないという話ではなく、大卒が増えすぎたことが主な原因だ。つまり教育投資に見合う仕事が見つからないというミスマッチの悩みである。だから深刻ではないとはいわないが、「大卒インフレ」の裏では人手不足も起きている点を忘れてはならない。

同じように不動産業界も、現在多くの企業が債務問題を抱えて苦しむ一方、その根底に政策の変更が作用したことは見逃してはならない。2020年、価格高騰が止まらない不動産市場を懸念した中国政府が、3つレッドラインを設けて融資のハードルを上げ、資金の逼迫を引き起こしたのである。

政策として意図的に冷や水を浴びせかけた背景には、富裕層以外に手が届かなくなった不動産市場のいびつな盛り上がりがあった。政府は、これを放置してバブルを膨らませる「危機の先送り」よりも、早めの対策を打つ必要に迫られていた。そして同時に不動産がけん引する経済発展の体質からも脱却できれば、言うことはなかったはずだ。だが現状を見る限り、当初描いた絵のようには事は進んでいないようだ。不動産業界の流す血は思いのほか「多量」だ。その一因には「コロナ余波」があるとされる。

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