商工会議所という伏魔殿
もう一つ、日本において賃金引上げに反対する”抵抗勢力”が商工会議所だ。最低賃金を引き上げると倒産が増える・・・、失業率が上がる・・・。
日本において中小企業が中心メンバーを占める日本商工会議所は、このように「雇用か、賃上げか」と二者択一を迫り、ことごとく賃上げを回避してきた。しかし、本当に賃金引上げによる企業の倒産は増えるのか。
先のアトキンソン氏は、
「そんなことはない」
と断言する(5)。さらに海外では、最低賃金の引き上げと失業率との相関関係は弱いという研究もある。
中小企業経営者の業界団体である日本商工会議所、全国商工連合会は自民党の有力な集票組織のひとつだ。
その日本商工会議所は、昨年来、「最低賃金に関する要望」を政府に届け、「最低賃金の引上げを賃上げ政策実現の手段として用いることは適切でない」と自民党に対し、強くくぎを刺している。
この構造は、同じ自民党の有力な支持組織である日本医師会と自民党との関係と似ている。
コロナ禍においても、新型コロナウイルスの感染拡大で公立病院などの患者は集中しても、”町医者”がスルーしたり、「2類相当」の扱いがいつまで経っても見直されず結局ウヤムヤにされたのは、日本医師会が自民党の有力支持団体だから。
また、おどろくべきことに、日本は”昔から”賃金が低かった。例えば、今から88年前の経済書である「平価切下とソシアルダンピングの話」(昭和9年 和甲書房)の中で、「日本の労働者の賃金は何故安いか」との問いに、
「第三には我が国の企業組織だ。紡績業や鉄工業・船舶製造業等の如きは欧米各国に劣らぬ大規模な進んだ設備を持つているが、尚一般には小規模の手工業・家内工業が甚だ多く取り入れられている。(中略)家内工業の性質として、少ない資本で長い時間を働き、家族全体がこれを手伝って、一人前の仕事をするといふやうな事から、賃金はグッと低下される」(同P.87)
との記述がある(6)。
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