なぜ日本の賃金は低いのか?実は伝統文化だった安月給、最低時給2000円を阻む勢力の正体

Depressed businessman bending down the head sitting on the stairs. Unemployed Middle edge man feel frustrated after business failure.Depressed businessman bending down the head sitting on the stairs. Unemployed Middle edge man feel frustrated after business failure.
 

やっと全国平均で時給1000円を超えた日本。しかし、増税や値上げ、社会保険料の負担増など、日本人の賃金は年々減りつつあります。なぜ日本人の給料は、他の先進国にくらべて低いままなのでしょうか? 今回のメルマガ『ジャーナリスト伊東 森の新しい社会をデザインするニュースレター(有料版)』では著者の伊東さんが、日本の伝統だと指摘する「安月給」の理由を解説しながら、日本の賃上げを阻む「抵抗勢力」の正体を暴いています。

プロフィール伊東 森いとうしん
ジャーナリスト。物書き歴11年。精神疾患歴23年。「新しい社会をデザインする」をテーマに情報発信。1984年1月28日生まれ。幼少期を福岡県三潴郡大木町で過ごす。小学校時代から、福岡県大川市に居住。高校時代から、福岡市へ転居。高校時代から、うつ病を発症。うつ病のなか、高校、予備校を経て東洋大学社会学部社会学科へ2006年に入学。2010年卒業。その後、病気療養をしつつ、様々なWEB記事を執筆。大学時代の専攻は、メディア学、スポーツ社会学。2021年より、ジャーナリストとして本格的に活動。

「安月給で働かされる」なぜ日本の賃金は低い?

厚生労働省の審議会は、今年度の最低賃金について、全国平均の時給で41円引き上げる目安を取りまとめた。

物価上昇を踏まえ引き上げられた額はこれまでで最も大きく、全国平均での時給は1002円となり、初めて1000円を超える。

最低賃金とは、企業が支払う時給の下限であり、パートやアルバイトらすべての労働者が対象となる。また最低賃金以上を払わない企業には罰則が科される。

厚労相の諮問機関である中央最低賃金審議会で労使の代表と有識者らが議論し、引き上げの目安額を示す。目安に基づき、各都道府県の審議会が議論して、各労働局長は金額を決め、毎年の10月ごろに改定する(1)。

しかしながら、依然として日本の最低賃金は世界と比べても見劣りし、相変わらずの”カス国家”ぶりを世界に見せつける。

労働政策研究・研修機構によると、7月1日時点の最低賃金額は、イギリス、フランス、ドイツが1800円前後。オーストラリアは2000円を超えている。

アメリカは連邦政府が定める最低賃金は低めだが、しかし半数以上の州が連邦政府の最低賃金よりも高く設定しており、2500円を超える地域も珍しくない。また円安の影響により、日本の最低賃金は韓国よりも低い状況だ。

そもそも、

「海外の最賃(最低賃金)は働いても生活できないワーキングプアをなくして、所得を底上げする社会政策の意味を持つが、日本はそうなっていない。欧州のように平均賃金にどれだけ近づけるかに目標を変える議論もすべきだ」(2)

と日本総研の山田久客員研究員が東京新聞の取材に答えるように、海外の企業の場合、常に”賃金引上げ”の圧力に侵されているが、日本の場合、そうはなっていない。

日本で賃金引き上げの動きを止める、真の“売国奴”はだれか?

目次

  • なぜ日本の賃金は低いのか
  • 商工会議所という伏魔殿
  • さらなる賃上げを 求められる「生活賃金」の導入

なぜ日本の賃金は低いのか

なぜ日本の賃金は低いのか。それは、日本の経営者が労働者を安い賃金で働かせることに固執し、とくに過度な価格競争を”自ら”することに慣れっこになってしまったからだ。

本来、経営者の仕事は「付加価値」をどう上げるかだが、日本の経営者は自らの首を絞めるように安売り競争の渦に突っ込んだ。そう、金融アナリストで小西美術工藝社社長のデービット・アトキンソン氏は語る(3)

また、よく「最低賃金を引き上げると、中小企業がつぶれる」との言説が垂れ流されているが、そこにも誤解がある。アトキンソン氏は、そもそも日本の中小企業の経営者の”レベル”が低すぎると説く。

実際、日本に限らずとも、どの国でも中小企業の”経営能力”は低いことが分かっている。同時に、これらの中小企業は労働集約型が多く、最新のテクノロジーを使うこともない。だからこそ、日本の労働生産性は低いままだ。

日本では、従業員20人未満の企業で働く人の割合が約20%もあり、この数字は他の先進国では10%台で推移しており、日本の中小企業の極端な”小ささ”が目立つ。

他方、従業員が250人以上の企業で働く人の割合は約13%しかない。この比率は、他の先進国では20%から30%もある(4)。

設備投資をするにしても、何らかのイノベーションを起こすにしても、小規模な企業よりも一定の規模を持つ企業は有利なことは、学術的にも証明されている。

要は、日本には最低賃金を引き上げると途端につぶれてしまう”どうしようもない”企業、生産性を高めることもなく、ただのうのうと存在し続ける企業、低い最低賃金で労働者を”搾取”するだけの企業が多いがために、一向に日本人全体の賃金が低いままなのだ。

さらに日本では賃金が上がらないことから生産性も上がらない。生産性を上げる競争がないから賃金が低いまま、という悪循環が続く。

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