「百薬の長」とも言われ、長生きの秘訣に晩酌をあげるお年寄りも多くいて、少量のアルコールは体に良いという考え方があります。しかし、血圧に関しては、少しでも飲めば確実に上がってしまうというデータがあるようです。今回のもりさわメンタルクリニックの無料メルマガ『精神医学論文マガジン』では、平均観察期間5.3年、合計約2万人を対象にした7本の研究から「飲酒量と血圧」の関係について分析した研究結果を伝えています。
わずかな飲酒でも血圧への影響は一貫している?
アルコールの種類や量によっては、飲酒は寿命に良い影響を与えることが指摘されてきました。今回は、飲酒の量によって血圧にどのような影響があるのかを調べたメタ・アナリシス(複数の研究を統合した分析結果)をご紹介します。
アルコール摂取と血圧レベル
● Alcohol Intake and Blood Pressure Levels: A Dose-Response Meta-Analysis of Nonexperimental Cohort Studies | Hypertension
7本の研究(平均観察期間5.3年、19,458人の参加者を含む)が分析の対象となりました。
飲酒量と収縮期・拡張期血圧との関連を調べました。結果として、以下の内容が示されました。
- 飲酒量がどのレベルかによらず、ごくわずかな量から一貫して、アルコール摂取は収縮期・拡張期血圧を上昇させる傾向がありました
- 飲酒していない場合に比べると収縮期血圧で、アルコール摂取12g/日で1.25mmHg、48g/日で4.90mmHg高くなっていました
- 拡張期血圧に関しては、性別や地域によって影響に相違がありました
要約:『アルコール摂取は少量からでも血圧を上昇させる傾向がある』
健康全体に対する影響をこの結果から判断することはできませんが、血圧の観点からはある量まで影響がないという閾値(ある刺激によって反応が生じる刺激のレベル)は存在しないようです。
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