自己啓発で語られる「思ったことが現実になる」は本当にいいことか?

 

しかし、そうしたビオトープも大きな嵐がやってきたら簡単に壊れてしまい、もともとの自然に取り込まれてしまうでしょう。セルフマネジメントもそれと同じです。基本的には負け戦であって、ごく僅かでも“功績”があればそれだけでもう十分な達成と言えます。ままならない世界にあって、ごく僅かでも「わがまま」を生み出せたなら、それはもう成功でしょう。

偏った自己啓発は、このまなざしを逆転させます。ビオトープにズームして、それ以外の自然を視界から消すばかりか、そういうものは在ってはならないものだとするのです。そりゃそうですよね。「自己」至上主義において、ままならないものはそれだけで不正義です。そんなものは断固として認められません。外部は常に自己にとって敵として表れてくるのです。

自己啓発のノウハウに、どれだけ有用なものが含まれていようとも、世界をみつめるまなざしが以上のように変質してしまえば、実践者の魂に善きものをもたらすことはないでしょう。

さいごに

別に思考は現実化しなくても大丈夫です。そもそもこの愚かしい自分の思考が現実化してしまえば、この世界は混乱するばかりです。小さな思いだけで十分なのです。ほんの小さな区画を作り、それをわずかな時間でも守れれば、それだけでもう何かを為したことになります。それ以外のことは、おまけみたいなものにすぎません。

その観点で、セルフマネジメントに関する技法を一度再点検してみてください。それは「自分の想い」しか扱っていないのではないでしょうか。それにしがみつくことは、本当に自分の生にとって良いことでしょうか。

難しい問いですが、考える価値のある問いだと思います。(メルマガ『Weekly R-style Magazine ~読む・書く・考えるの探求~』2023/08/28号より一部抜粋)

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1980年生まれ。関西在住。ブロガー&文筆業。コンビニアドバイザー。2010年8月『Evernote「超」仕事術』執筆。2011年2月『Evernote「超」知的生産術』執筆。2011年5月『Facebook×Twitterで実践するセルフブランディング』執筆。2011年9月『クラウド時代のハイブリッド手帳術』執筆。2012年3月『シゴタノ!手帳術』執筆。2012年6月『Evernoteとアナログノートによる ハイブリッド発想術』執筆。2013年3月『ソーシャル時代のハイブリッド読書術』執筆。2013年12月『KDPではじめる セルフパブリッシング』執筆。2014年4月『BizArts』執筆。2014年5月『アリスの物語』執筆。2016年2月『ズボラな僕がEvernoteで情報の片付け達人になった理由』執筆。

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