日本の通信サービスの人口カバー率が2024年中に、ついに100%になりそうです。スペースX社と提携するKDDIがスマートフォンと衛星との直接通信を開始すると発表。離島や山間部に海上など、日本中どこでもいま使っているスマホで通信できるとのことで、auのユーザー増につながるのか注目です。今回のメルマガ『石川温の「スマホ業界新聞」』では、ケータイ/スマートフォンジャーナリストの石川さんが、先を越されたKDDIに対し、競合3キャリアがどう対抗しようとするのか展望しています。
KDDIがスペースXと「スマホと衛星の直接通信」を2024年に実現──残り3キャリアはどのように「直接通信」に対抗していくのか
KDDIは8月30日、スペースXと共同記者会見を開催。2024年中にスマートフォンと衛星との直接通信を開始すると発表した。これにより、現在は人口カバー率で全国99.9%で通信サービスを提供しているが、衛星との直接通信で事実上、全国100%、離島や山間部、海上などでもスマートフォンが使えるようになる。しかも、新たに「衛星通信対応のスマートフォン」を購入する必要はなく、すでに所有しているスマートフォンで利用できるというのが売りだ。
スペースXでは、2022年にT-Mobileとスマホとの直接通信を行うとアナウンスしていたが、KDDIからもようやく発表されたことになる。スペースXでは、すでにアメリカ、日本だけでなく、カナダやニュージーランド、オーストラリア、スイスでも同様のサービスを提供するとしている。
「スペースモバイル計画」として、いち早く衛星によって、全国100%のエリア化を実現しようとしていた楽天モバイルはKDDIに先を越された格好だ。楽天モバイルはこの9月にも北海道で実証実験をするとイベントで明らかにしていたこともあり、KDDIがいち早く、発表し、話題をかっさらってしまった感がある。
ただ、楽天モバイルが「スペースモバイル計画」を発表した当初、業界関係者の誰もが「地上にあるスマホと衛星が直接通信するなんて無理なのでは。そもそも電波が届かないのでは」と否定されていたが、いつの間にかアップル・iPhone 14で衛星に向けたSOSメッセージが送れるようになるなど、もはや「常識」にさえなってしまった。
ソフトバンクはHAPSモバイルとOneWebに注力している間に、スペースXとKDDIにうまいことやられてしまった。NTTドコモは、NTTとスカパーJSATによる「スペースコンパス」頼みということになりそうだが、こちらは2025年にHAPSを打ち上げるという計画が発表されて以降、ほとんど音沙汰がない。
先手を打ったKDDIに対して、3キャリアが衛星通信で頼みの綱となりそうなのが、アップルとクアルコム、グーグルだろう。アップルの衛星通信が、日本でいつ実現されるのか。日本でも提供されれば、とりあえず、4キャリアは「衛星とiPhoneの直接通信」をアピールできるようになる(他社との差別化にはならないが)。
クアルコムも「Snapdragon Satellite」を発表しており、Honor、Motorola、Nothing、OPPO、vivoおよびXiaomiが名乗りを上げている。日本のキャリアと馴染みのあるメーカーがあまりないが、Snapdragon Satelliteが始まれば、どこかのメーカーのデバイスを調達して、「衛星との直接通信できるスマホ」として売り出すことは不可能ではない。
ただ、いずれも「機種が限られる」という点が悩ましい。その点、スペースXは、KDDIが持つ周波数帯を使うということで、ほとんどのスマホで衛星通信が使えるようになる見込みだ。
果たして、スマホと衛星の直接通信はユーザーにどこまで響き、auユーザーの増加につながるものなのか。2024年のサービス開始がかなり待ち遠しい。
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