あの小林製薬がとる「小さな池で大きな魚」戦略って一体どんなモノ?

 

さっそく本文のなかから、気になった部分を赤ペンチェックしてみましょう。

一番重要なのは、野心的な変革目標(MTP: Massive Transformative Purpose)から事業をはじめること

マーケティングの妙は、顧客の琴線に触れるコミュニケーションによって価値均衡点/VEL: Value EquilibriumLine を上回る「突き抜ける価値」に対して共感を得ることにある

ちょっとした贅沢品でよく売れるものは、この3段階目の探求・知識・学習・自己実現・自己超越などのニーズを本人に自覚させるようなコミュニケーションを経て、欲求に転化させることが多い

サイモン・クチャー社の調査によると「ラグジュアリー製品の販売価格を2%引き上げると、税引前利益が9~25%向上する(利益増加幅の差異は製品カテゴリーに依存)ことが判明しており、価格最適化による利益拡大の機会が存在する可能性は高い」

小林製薬が掲げるのは、「小さな池の大きな魚」戦略である。思考順序はこうだ。

(1)みんなが釣りに来る池は競争が激しい
(2)小さくてもよいから自分一人で釣る
(3)その池を掘りつづけて大きな魚が住めるようにする=市場を大きくする

2010年にキヤノンやニコンの最大の強みである「レンズ資産活用」を無効化するために、ソニーαシリーズ新規格のレンズ口径に変更し、他社レンズが使えるように仕様情報を開示することで、レンズマウントアダプターもサードパーティを通じて整備した。こうすることで、両老舗メーカーからのスイッチングコストを下げたのである

成功の鍵は「マーケティング・イノベーション・マトリクス」

「(1)分散化・売り手市場」では、「ハイエンド・ブランド商品の希少性」(スノーピーク、ルイ・ヴィトンなど)
「(2)集約化・売り手市場」では、「エントリーバリア商品」の戦略(キーエンス、日東電工など)
「(3)分散化・買い手市場」では、「ピンポイントニッチ商品」の戦略(小林製薬、クラシコムなど)
「(4)集約化・買い手市場」では、「マス高付加価値商品」の戦略(アパホテル、テスラ、ソニーαカメラなど)

サイズダウンには、顧客が納得する理由が必要

5人の共著ということで、仕方ないと思うのですが、なかには掘り下げが甘い記述や、他の本で十分カバーできる内容もありました。

ただ、オビにある「シェア独占企業62の事例に学ぶ」という部分は約束通り書かれており、どうすれば価格支配力を持てるのか、どう商品開発やマーケティングをすればいいか、ヒントが多くありました。

最新の事例と見解が載っており、マーケティングの知識をアップデートしたい向きにも最適です。

ぜひ、読んでみてください。

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Amazon.co.j立ち上げに参画した元バイヤー、元読売新聞コラムニスト、元B11「ベストセラーBookV」レギュラーコメンテーター、元ラジオNIKKEIレギュラー。現在は、ビジネス書評家、著者、講演家、コンサルタントとして活動中の土井英司が、旬のビジネス書の儲かる「読みどころ」をピンポイント紹介。毎日発行、開始から既に4000号を超える殿堂入りメルマガです。テーマ:「出版/自分ブランド/独立・起業」

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【著者】 土井英司 【発行周期】 日刊

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