在米ユダヤ人社会の中にも広がる「2国家共存」論の支持
そうなる前に、まずは「停戦」でなければならない。アラブ諸国が準備しヨルダンが提案者となった国連総会決議案は当初「即時停戦」を求める内容だったが、幅広い支持を集めるため「人道的休戦」を求めると共に「違法に拘束されている民間人の即時解放」を促すものに変更。27日の緊急特別会合で中国、ロシア、フランス、ブラジルを含む121カ国の賛成で成立した。反対したのはイスラエル、米国のほか欧州ではオーストリア、チェコ、ハンガリー、クロアチアなどを含む僅か14カ国だった。
ユダヤ人の総人口のうち614万人がイスラエルに、543万人が米国に住んでいて、合計すると1,157万人で総人口の77%に当たる(2014年)。つまり「国際ユダヤ社会」と言ってもその実体はこの2カ国だけなのである。しかも米国では、伝統的なシオニスト団体である「米イスラエル公共問題委員会(AIPAC)」とそれに連帯するキリスト教福音派の政界ロビー活動が強力で、彼らはパレスチナ人を“駆除”してその地にユダヤ人国家を建設するというネタニヤフなどイスラエル右翼の狂った主張を支持しているので、米政府の政策もそこへ引き付けられやすい。そのためバイデン大統領も、取るものも取り敢えずハマスを非難しイスラエルの立場を断固支持すると表明し、国連決議にも反対に回ったのだったが、イスラエルの「5倍返し」報復による地獄絵を見て忽ち動揺し、地上侵攻の開始を押し留めるよう内面からの働きかけを始めているらしい。
その裏側では、在米ユダヤ人社会の中でも特に若い層にはシオニスト路線に反発し、イスラエルの地でユダヤ人国家とパレスチナ国家を共存させる「2国家共存」論を支持する意見が広がっていて、前者が共和党支持なのに対して後者は民主党支持が多いという、米ユダヤ勢力の中の構造変化も作用しているようである。そのためバイデンは、イスラエル全面支持であるかのように言ったかと思えばすぐにトーンダウンし、ほとんど腰が抜けているかのようである。
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