10月24日、クアルコムが年次イベントを開催。そこで発表された新チップセット「Snapdragon 8 Gen 3」は生成AIに対応し、既に搭載されているAndroidスマホもあって、今後続々発売されていくことになるようです。今回のメルマガ『石川温の「スマホ業界新聞」』では、ケータイ/スマートフォンジャーナリストの石川さんが、スマホがさらに賢くなっていく未来を解説。AIでは遅れを取っている感のあるアップル「iPhone」に対して、Android陣営がアドバンテージをどう生かしていくか注目しています。
クアルコムが生成AI対応の「Snapdragon 8 Gen 3」を発表──生成AIに対応できていないアップルに一矢報いるか
クアルコムは10月24日、アメリカ・ハワイ州マウイ島で年次イベント「Snapdragon Summit」を開催した。今年の注目はなんといってもAIで、スマホがさらにAIで賢くなる未来を実感した。
特に驚いたのがSnapdragon 8 Gen 3で、オンデバイスAIとして、機内モード状態でネットにつないでいなくても、MetaのLlama 2によって「東京からマウイ島への行き方」などの質問に答えてくれていた。
当然のことながら、最新情報などには疎いのだが、そのあたりはクラウドと連携する「ハイブリッド」によって利便性を上げていくことになりそうだ。
とりあえず、オンデバイスAIであれば、レスポンス良く会話ができるだろうし、何よりデバイスから出て行くデータが限られることになるので、プライバシーを守ることにもつながる。アップルはこれまでユーザーのデータをできるだけデバイス上で処理し、プライバシーを守るというスタンスを貫いてきたが、オンデバイスAIであれば、そうした取り組みを維持することができるだけに、来年あたりのiPhoneでもオンデバイスAIによるボイスアシスタントが登場してきてもおかしくないだろう。
カメラに関しても、AI処理によって、動画でも余計な人物を消せたり、夜間の撮影が強化されたり、実際には撮影できてない場所をAIが描いてくれたりといった機能が盛り込まれている。今後、各メーカーがどのような工夫を凝らしていくのかが興味深いところだ。
特にAndroidメーカーは、グーグルのPixelが提供する「消しゴムマジック」に「なんでうちらに提供してくれないのか」と不満を持っていそうなだけに、Androidメーカーが独自にSnapdragon 8 Gen 3で「なんちゃって消しゴムマジック」などを搭載してくる可能性は十分にありそうだ。
イベント最終日にSnapdragon 8 Gen 3の開発責任者に話を聞くことができたが、節々に「iPhone」という言葉が出てきて、相当、アップルのA17 Proを意識しているのだなという雰囲気が伝わってきた。
Snapdragon 8 Gen 3としては生成AIに対応しており、このあたりのアドバンテージがあると自信を持っているようだ。実際、いまのところはアップルとしてもAIに関しては苦手な感じがあるため、クアルコムとしても攻めどころだと思っているのだろう。
ただ、ティム・クックCEOは「アップルは何年も前から生成AIを研究している」と今年8月にメディアで語っていただけに何か秘策があり、来年あたりに投入してくる可能性もあり得そうだ。
とはいえ、Snapdragon 8 Gen 3を搭載したスマートフォンはすでに発売され始めているだけに、Android陣営としてこのアドバンテージをどれだけ生かせるかが気になるところだ。
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