「クマを駆除するな」で分断される日本。地方生活者を“見下す”クレーマーに疑問の声、富士山では「どんぐり勝手にバラマキ事案」も発生

2023.11.13
by kousei_saho
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世界中で問題視されている分断の拡大。我が国においては、「クマ駆除の是非」をめぐり国民が分断されてしまったようだ。連日、クマによる被害が報道される中にあって、その駆除に乗り出した自治体へ執拗なクレーム電話や抗議を行う個人・団体が物議を醸している。多くの市民がクマの出没に怯えて日常生活さえままならず、実際にクマの襲撃による犠牲者数も日毎に増加しているのが現状だが、それでも外野から「クマを殺すな」「人命よりクマの命を守れ」と叫ぶ人間が多いのだ。なぜクマ駆除に抗議する人々は、「地方」の生活やそこで暮らす住民の命を見下すかのような声を上げるのだろうか。

統計開始以来最多の人的被害

環境省のまとめによれば、今年度の10月末の時点までのクマによる人的被害は180人。統計開始以来最多となっており、5人の死者も出ている。11月に入っても北海道の山中で大学生が遺体で発見されるなど、死亡事故を含め被害が相次いでいる状況に変わりはない。

本州で熊の出没情報がないのは千葉県のみ。SNS上では「結界により守られている」とする説を唱える声もあるが、専門家によると「地理的な問題」であり、過去にクマの生息例もないという。

一人で30件もの「クマ駆除への抗議」を入れた女性も

当然ながら各自治体は住民の安全確保のためにクマの駆除を行っているのだが、これに抗議する電話などクレームが殺到しているというから驚きだ。

報道によると、さまざまな自治体に一人で30件もの抗議を入れた女性もいたという。彼女のみならず、X(旧Twitter)にはクマ駆除に断固反対の立場を取るアカウントも散見されるのが事実だ。

しかしながら優先されるべきは当然ながら人命。実際に秋田県の佐竹敬久知事は人命最優先の熊対策を行うと表明しており、登山家の野口健氏もXに「里に降りてきてしまった熊の駆除も人命を優先するのならば、やむを得ない」とポストしたことがネットニュースなどでも広く報じられた。

クレーマーたちの言い分の中には、「クマを殺すのではなく人間と共存の道を探れ」とするものもあるが、「野生生物と社会」学会は「関係者への配慮の無い電話や執拗なクレームは、関係者の努力をくじき、かえってクマとの共存を妨げる結果を招く」との声明を出している。つまりクレーマーたちは、自らの行為がクマと人間との共存を遠ざけていることに気づかないのだ。

富士山では「どんぐり勝手にバラマキ事案」が

クレーマーたちはまた、クマ駆除への抗議の理由としてたびたび「自然保護」を上げるがこれとて本気度は疑わしい。「どんぐり勝手にバラマキ事案」をご存知だろうか。富士山の表高2,400m地点で大量のどんぐりが発見されたのだ。

発見者のXへのポストによれば、この地点はどんぐりが生育しない標高ということで、人為的に撒かれた可能性が高いとのこと。芽吹こうものなら周辺の生態系に悪影響を及ぼすことは必至だ。

何者の仕業かは未だ明らかになっていないが、一部のクマの保護を目的とした団体が、クマが人里近くに降りてこないよう、彼らの主要な食物であるどんぐりを集めて山に撒く活動していることが以前からたびたび報告されている。仮に今回のバラマキ事案がそうした団体の手によるものであったとしたら、クマを守るという目的のためなら生態系を変えることすら「善」とすることになり、ダブルスタンダードも甚だしいと言わざるを得ない。

クレーマーは地方の生活者を見下しているのか

前出の「一人で30人クレームを入れた女性」はテレビ朝日の取材に対し、「自分は都市部に住んでいるため農村部に住んで被害に怯えている人の気持ちはわからない」という旨の発言をしている。彼女同様クレーマーたちは、クマ出没地域である「地方」全ての生活者を見下す都会人なのだろうか。そして地方に暮らす人々の安全や命はかくも軽いものなのだろうか。そんなクマ駆除問題から垣間見える「地方軽視」にネット上は大きく揺れ、そして分断も広がっている。

生活を脅かすクマの駆除に執拗なクレームを繰り返し、クマが出没するのは人間の責任だと言い張り、保護のためどんぐりをばら撒き生態系を乱す…。彼ら彼女らのような人々は、一度クマが頻繁に現れる地方に暮らしてみてはいかがか。たとえ期間限定であってもいい。その時、今現在の主張を叫び続けることができるのだろうか。

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