互いの出方を探り合うイスラエルとハマス
実際に11月23日日本時間22時現在、イスラエルとハマスによる人質の解放が実施されたという情報はなく、イスラエル軍によるガザ北部への空爆も、予告通りに定期的に行われ、ガザでの被害者数が増え続けている現状が続いているようです。
イスラエルが行った制裁・報復措置であるガザ地区に対する通信妨害によって、ドーハからの“指示”がガザに届いていないのではないかという見方もあるのですが、どうも「どちら側が先にこの合意内容を実施するのか」を探り合っているような雰囲気も感じられます。
このような状況が続く限り、通常は合意の実施は、望んだような方向では進められないか、一向に起こらないことが明らかになっています。
今回は例外的な状況が起きることを切に祈りますが、紛争の当事者であり、戦闘の実施者であるものの声を代表しておらず、相互に不信感が色濃く残っている当事者間の合意はなかなか進められません。
そして今回の合意をさらにfragileにし得る要素が、イスラエルが合意成立後に発した「停止するのは地上侵攻であり、ガザ北部に対する空爆は継続する」という宣言です。
これにより合意内容が履行されるという保証がないことを意味し、かつガザサイドからすると、イスラエルの“約束”は、空約束であることが明白に感じられるようになります。
当初、イスラエルは地上侵攻前にガザ北部に住むパレスチナ人に警告を発し、南部に逃げる時間を与えると言っていていましたが、その移動・退避の列に空爆を加えて殺害するような事態が連発し、「ハマスが潜んでいる」という言い訳を通じて、国際社会からイスラエルに浴びせかけられる人道法違反を正当化しようとし、病院攻撃について出した“証拠”も、具体的に“どの病院”なのかは明かされないまま、病院地下やトンネル網の絵面だけを映し出して、ハマスの蛮行の証拠としていますが、これをまともに信じる人はいないでしょう。
アル・シャファ病院の地下に“あったトンネル”をハマスによる軍事拠点と、イスラエル軍の報道官が動画を通じて説明していますが、それが本当にシャファ病院かどうかの証拠は示していません。そして何よりも人道的な介入の必要性と、4日間の一時停戦、そして人質の解放が最優先と言いつつ、ガザ北部での爆撃は継続し、かつ口を開けば「ハマス壊滅までイスラエルは戦闘を止めることはない」と繰り返し訴えることで、自らが加わった合意の信頼性を著しく損なう事態になっているように見えます。
これからの4日間、本当に50名の人質(女性と子供)がハマスによって解放され、イスラエルによってハマスの構成員とされた囚人が解放されるのかは見ものですし、本当に戦闘は停止されるのか、そして燃料が本当にガザに運び込まれ、危機的な状況を少しでも改善するのか、しっかりと検証することが必要です。
今回の一時戦闘停止および人質解放の合意については、アラブ諸国は表向き歓迎しつつも、その合意が実施されるのか否か固唾をのんで見守っていますし、仲介を行ったアメリカ、カタール、エジプトの政府は、それぞれの面子に関わる問題であるため、イスラエル政府とハマスに迅速な合意内容の実施を促しています。
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