アラブ諸国が一気にイスラエル攻撃を開始する可能性も
そのような中、調停・仲介に携わっているグループが共有している懸念があります。
仮に今回の合意内容が着実に実施されたとしても、元々200名を超える人質を取っているハマスとしては、今回もそうですが、人質を持っていることは強い交渉カードになるため、50名の解放には応じても、その後、追加の解放を積極的に行うことはないのではないかと見ています。
また、イスラエル側も、今、戦時臨時内閣を組閣して挙国一致体制で対応に当たっていますが、「今、戦闘を停止し、かつ燃料を与えることで、ハマスを勢いづかせる恐れが強い」として停戦実施に反対する勢力と、「人質の解放が最優先であるため、一時戦闘停止の実施はやむを得ない」とする勢力の意見の調整があまり上手く進んでいないと言われており、4日の戦闘停止がぎりぎりのラインだと見られています。
合意においては「4日の期限が過ぎた後、10人解放するごとに戦闘停止期間を1日延ばす」という内容がありますが、これは“人質解放が最優先”と考えるグループが押し込んだ内容と言われており、必ずしもイスラエル軍部は納得しておらず、その証拠にガザ北部への空爆は継続するという矛盾に満ちた主張を受け入れざるを得ない苦境に立っていると見ています。
実際に何名の人質がどのような形で解放され、それがいつまで続くのかは来週にならないと分かりませんが、確実に言えることは、「近いうちに人質全員、特に戦闘可能な男性が解放される見込みは非常に薄い」ことと、「戦闘停止は永久には続かない」ということです。
イスラエル軍とハマスとの戦闘が再開された時、most likelyなシナリオでは、戦闘はこれまでになく激化し、その後は戦闘のエスカレーション傾向が強まると考えられています。
これまでのところアラブ諸国やトルコはパレスチナとの連帯を示し、イスラエルの軍事行動を過剰防衛と全面的に非難していますが、直接的に介入することは控えています。
それは自国に戦火が拡大することを非常に恐れていることを示していますが、これ以上、ガザ地区における被害が拡大し、アラブに対する挑戦というように形作られるような事態が生まれた場合には、アラビア半島、北アフリカ、ペルシャ湾などへの戦争の拡大が予想されます。
今のところ、イランもヒズボラも自制していますが、最近、アメリカ軍による予防的な攻撃に晒されることが増え、これまでの恐怖感から、次第に対抗に打って出るべきという考えが強まっているという情報が入ってきています。直接アメリカ軍への攻撃をすることはないと思いますが、イラン革命防衛隊とイエメンのフーシー派、そしてヒズボラが、これまでの散発的な攻撃という距離感を縮め、ハマス不利と見た場合、一気にイスラエルに対する攻撃を開始する可能性が高まっていると感じています(ただし、イラン、フーシー派、ヒズボラは皆、イスラム教シーア派でイランの影響力の下にあるため、仮に戦闘拡大になった場合にも、スンニ派のアラブ諸国が、シーア派勢力と徒党を組んでまでイスラエル攻撃に加わり、イスラエルの標的になることを厭わないと判断して参戦するか否かは分かりません)。
もしそのような地獄のような事態が発生する場合、その戦火は広がり、東地中海を通じて欧州南部にも及ぶことは避けられず、さらにはトルコなどを経由して、南部からウクライナを飲み込む恐れも出てきます。
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