記憶に残る患者がいるか。
「今夏、結婚を控えて交通事故に遭い、脳死判定を受けた女性を思い出す。夢が多かった彼女をあまりにも早い年齢で行かせなければならない家族の悲しみはことばに尽くせるものではない。娘と別れの挨拶ができるように小さな臨終室を用意してあげた。すると、家族が心のこもった感謝の挨拶をしにきた。本当に心が痛んだ。医師がすべての患者を助けることはできなくても、患者と保護者の状況に共感し、常に『慰め』は与えられると信じている」
外傷センターの一日は。
「午前に出勤して回診し、入院患者の状態を確認する。入院患者に何かあったらすぐ駆けつける。同時に、いつ来るか分からない重症外傷患者のために待機する。そうするうちに119救急隊から連絡が来ると、外科だけでなく神経外科・整形外科・胸部外科専門医が『外傷蘇生区域』に駆けつけて患者を待つ。患者が来たら気道を確保し、首に添え木を固定し、出血を抑える処置を一糸乱れぬ手際で
行う。応急手術もすぐに行う」
外傷センターが1日に見る患者数は。
「救急車に運ばれてくる重症外傷患者は1日2~6人程度だ。入院治療患者は約60人だ」
患者1人のために複数の専門医が付くのか。
「そうだ。外傷はチームワークだ。頭からつま先まで怪我をした患者は、医師1人の力では生かすことができない。チーム員たちが疎通して協力するのが核心だ。国立中央医療院外傷センターは外科専門医4人(キムセンター長を含む)、神経外科・整形外科・胸部外科専門医各1人など専担専門医が計7人いる」
一番大変な点は何か。
「人手不足だ。外科はとっくに忌避科になったが、外傷はその中でも特に人気がない。皮膚美容などに比べてお金をたくさん稼ぐわけでもないのに、当直は多く、訴訟の危険負担まであるので理解できないわけではない」
政府が医学部増員カードを出したが……。
「医大定員を増員したからといって特定科に行けと強制することはできないのではないか。どうせ外傷に使命感を感じない人たちは長く持ちこたえることができない」
外傷学に関心のある後輩たちに言いたいことは。
「外傷センターは死の入り口まで行った患者が来るところだ。彼らを生かして日々良くなる姿をリアルタイムで見守る過程は、医師として大きな動機付けだ。外傷患者を治療するのに楽しさを感じるなら、外傷センターに来ることを迷わないことを願う。朝起きて自分がやりたいことをするために家を出る。これ自体が素晴らしいことであり成功ではないのか」









