カタールとエジプトの仲介によりようやく停戦が実現するも、再び激しい交戦状態に陥ってしまったガザ紛争。かねてから懸念されているイランの参戦ですが、戦火は中東全体に及んでしまうのでしょうか。今回のメルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』では国際関係ジャーナリストの北野幸伯さんが、当紛争はイスラエルとガザの衝突ではなく、イスラエルとイランの戦争だと断言。そう判断せざるを得ない理由を解説した上で、事実上の「アメリカ対イラン」の戦争も既に始まっているとの見解を記しています。
すでにはじまっているアメリカ―イラン戦争
全世界のRPE読者の皆様、こんにちは!北野です。
まず、Kさまからのメールをご紹介します。
北野様
いつもためになり面白いメルマガをありがとうございます。イラン大使館の向かいに住んでいるKです。
イラン大使館は1年くらい前から閉鎖され、24時間警官が前に立って警戒しています。
閉鎖された当初は警察車両が護送車も含めて3台も配置され、警護にあたるのも普通の警察官だけでなく、防弾チョッキを身につけた刑事が長い棒を持って睨んでいたりして、物々しい雰囲気でした。
週に何度もイラン人のデモ隊が来て数時間に渡り拡声器で抗議の声をあげるなどしていましたが、最近はデモ隊も来なくなり、警察車両も1台のみ、警察官も暇そうです。
大使館周辺に住んでいたイラン人は姿を見せなくなり、隣のイラン人学校も人の気配がありません。
でも、警察車(中型のワンボックス)はエンジンをかけたまま、運転席にいる警官が周囲を警戒し続けていて、緊張状態は続いています。
ハマスとイスラエルの戦争の報道はかなり偏っていて、本当のところは?といつも訝しんでいます。
私としてはイランの動向が気になって仕方ないのですが、断片的にしか伝わってこないので、フラストレーションを感じています。
北野様が何か情報を掴んだら、メルマガでお知らせくださると嬉しいです。
私は「イスラエル―ハマス戦争」が起こる前の9月、「イスラエルとイランの戦争が年内に起こるかもしれない」と書いていました。メルマガを保存されている方は、ご確認ください。『ロシア政治経済ジャーナル』2023年9月19日号『イランの核兵器保有と次の戦争が近づいている?』です。とても重要な話ですので、バックナンバーを転載しましょう。繰り返しますが、これは9月19日の記事。イスラエルーハマス戦争勃発は、10月7日です。
【 9月19日号 転載ここから 】
イランがIAEAの査察を拒否しました。「日経新聞」9月17日付。
「国際原子力機関(IAEA)は16日の声明で、イランからIAEAの一部査察官の受け入れを拒否すると通告があったことを明らかにした。査察官はウラン濃縮などを検証している。グロッシ事務局長は『強く非難する』と述べ、査察に深刻な影響が出るとして再考を求めた。国際社会の懸念が一層強まるのは必至だ」
この問題、少し振り返ってみましょう。
アメリカは、ウソの理由でイラク戦争をはじめた2003年頃から、「イランは核兵器を開発している!」と非難していました。
ネオコン・ブッシュ政権のアメリカは当時、「2016年までにアメリカ国内の石油が枯渇する」と信じていた。それで、資源がたっぷりある中東支配に動いていたのです。「イラクの次は、イランだ!」と(しかしその後、「シェール革命」が起こり、アメリカは世界一の産油国、産ガス国に浮上。中東の資源を確保する必要はなくなり、この地域への熱意は減りました)。