かねてより台湾侵攻の準備を着々と進めていると伝えられる中国。そんな中にあって、中国軍シンクタンクの元副院長による物騒な物言いが注目されています。今回のメルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』では国際関係ジャーナリストの北野幸伯さんが、明らかに「台湾と尖閣を同時に奪う」と受け取れるその発言を紹介。さらに日本が中国と「和解」を進めるべき戦術的理由を解説しています。
プーチンと同じ穴の狢。台湾・尖閣の次に沖縄も取りに来る習近平
全世界のRPE読者の皆様、こんにちは!北野です。
皆さん、気づいておられるでしょうか?最近、日本、アメリカ、欧州、オーストラリアなどが、中国との和解を模索しています。11月15日の米中首脳会談、11月26日の日中韓外相会談などを見て、「なんか変わってきたな」と思われた方も多いでしょう。なぜそうなっているのでしょうか?
今、ロシアーウクライナ戦争、イスラエルーハマス戦争が起こっています。アメリカは、ウクライナとイスラエルを支援している。「二正面作戦」です。
ここで中国が台湾に侵攻し、北朝鮮が韓国に侵攻すれば、「四正面作戦」になってしまいます。だから、中国が今台湾に侵攻すると困る。それで、欧米と日本は、一体化して中国懐柔に動いているのです。
一方中国は、不動産バブルがはじけ、外資が大挙して逃げ出して、経済がボロボロになっています。だから中国は、欧米と仲よくして、制裁を解除してほしいし、外資に戻ってきてほしい。それで、中国側にも、日本や欧米と仲よくしたい動機があります。
皆さんご存知のように、私は全然親中ではありません。『中国に勝つ日本の大戦略』という本を出しているぐらいですから。しかし、いつでもどこでも中国に対し強気ならいいというわけではありません。
習近平が、「アメリカは今、ウクライナ支援、イスラエル支援で二正面作戦をしている。台湾を助ける余裕はないだろう。今なら侵攻できるぞ!」と確信したらまずい。だから今は、日欧米豪などと仲よくしたほうが「お得」ですよと思わせる必要があるのです。
日本には平和ボケの人がたくさんいて、「中国が台湾に侵攻しても、日本は関係ないじゃないですか???」などと言う人がいます。そんな人は、中国軍シンクタンク軍事科学院の何雷・元副院長(中将)が何を語っているか知るべきです。『共同』12月9日付。
日中関係が不安定化する要因について、台湾問題を挙げ「中国の核心的利益に干渉するのは許されない」と語った。尖閣を「台湾省」の一部だとする中国の主張に基づいて台湾統一と尖閣奪取を同時に行う可能性について問うと「(中国主張の)道理からすればそうだ」と答え、否定しなかった。
どうですか、これ?中国の主張は、以下のようになります。
- 尖閣は、台湾の一部である
- 台湾は、中国の一部である
- よって、尖閣は中国の一部である
- だから、中国が台湾を武力統一する際、当然(台湾の一部である)尖閣もいただく
というわけで、中国による台湾侵攻は、日本領への侵攻でもあるのです。