台湾「親中派の敗北」は真実か。日本で報じられない台湾総統選の真相

 

「どこにも投票したくなかった」。台湾有権者の本音

では、その理由何なのか。

よく指摘されるのは経済だ。実際、問題は山積している。だが前回の選挙で蔡を当選に導いた最大の風は香港の民主化デモであり、それは中国のオウンゴールだった。つまり8年前に中国への警戒から蔡英文を選んだ人々が、今回は民進党から離れてしまったという解釈も成り立つ。つまり対中国での民進党離れだ。これでは頼当選を蔡政権の対外政策の支持と安易にはつなげられない。

今回の選挙は、投票率が高く、日本メディアや外国メディアの注目度も高かったが、その一方で、その熱狂に見合うほど台湾の有権者が盛り上がったのかといえば、はなはだ疑問だ。

13日、投票を終えて出てきた30代前半の男性に話をきくと、開口一番「本当は投票には来たくなかった」と、こう吐き捨てた。

「テレビを見ても候補者が相手の悪口ばかり言っていて、うんざりした。外国との関係も対立ばかりで安定しない。だから本当は誰にも、どこにも投票したくなかった」

だが、台湾の若者は中国の圧力を跳ねのけて自由を守る民進党を応援しているのでは?と水を向けてみると「そんな大げさな話はいい。どうせ何もできないんだから。そんなことより生活をよくしてほしい」とにべもない。

街で選挙を話題にしたとき、これと同じような答えが返ってくることは少なくなかった。

投票前日、初二のため土地の神を祀る線香の香りがうっすらと包むなか、供物を並べていたレストランのオーナーの男性に声をかけると、「前回は民進党に入れたが、今回は別の政党にいれる」とその理由を語った。

「新型コロナウイルス感染症対策での迷走ぶりはいまも忘れられない。生活もひどいもんだ。よくなるって兆しがどこにもない」

前回の投票で国民党を熱烈に支持した60代後半の男性は、選挙そのものに関心を失ったという――(『富坂聰の「目からうろこの中国解説」』2024年1月15日号より一部抜粋、続きはご登録の上お楽しみください。初月無料です)

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1964年、愛知県生まれ。拓殖大学海外事情研究所教授。ジャーナリスト。北京大学中文系中退。『週刊ポスト』、『週刊文春』記者を経て独立。1994年、第一回21世紀国際ノンフィクション大賞(現在の小学館ノンフィクション大賞)優秀作を「龍の『伝人』たち」で受賞。著書には「中国の地下経済」「中国人民解放軍の内幕」(ともに文春新書)、「中国マネーの正体」(PHPビジネス新書)、「習近平と中国の終焉」(角川SSC新書)、「間違いだらけの対中国戦略」(新人物往来社)、「中国という大難」(新潮文庫)、「中国の論点」(角川Oneテーマ21)、「トランプVS習近平」(角川書店)、「中国がいつまでたっても崩壊しない7つの理由」や「反中亡国論」(ビジネス社)がある。

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