プーチンとネタニエフがやりかねない「核使用によるリセット」
アラブ社会は、口では非難しつつも、すでに出来上がっているアブラハム合意に基づくイスラエルとの経済的なパートナーシップ協定による利益と恩恵を捨てることが出来ない状況になっていることに鑑みて、あまりイスラエルを苛立たせることはしたくないという思惑が見え隠れするため、あまり永続的な態勢づくりには貢献できず、結局、イスラエルが押し切る形が固定化するような気がします。
唯一、イスラエルに待ったをかけられるのがアメリカ政府になるのですが、バイデン大統領とネタニエフ首相との関係はあまり良好とは言えず、イスラエル政府もあまりアメリカの意向を仰ぐことをしなくなってきていることもあるのと、国内政治上、ユダヤ人支持層の獲得が至上命題であることは変わらないとしても、今回の案件を受けて、必ずしも在米のユダヤ人は、思っていたようにプロ・イスラエルではないことが分かり、同じユダヤ人でも対イスラエル感情に差が出てきていることも、アメリカがあまり積極的な関与を今後しなくなる可能性が高いことが予測されます。
そうなると、イスラエル絶対優位となりそうなのですが、それも、先ほどのウクライナに対するプーチン大統領の今後の姿勢ともよく似ていて、もし行き過ぎたコミットメント、特に低出力であったとしても、核兵器を使用するような一線を越えた決断をした場合には、一気に形勢が逆転し、国際社会からの反応も一変することとなります。
以前、閣内の教育担当大臣がイスラエルによる対ガザ核兵器使用の是非についての発言をして、ネタニエフ首相が急いで打ち消すというシーンがありましたが、可能性は低いと考えるものの、全くないとは言い切れないと危惧しています。
人質の解放も遅々として進まず、ハマスの壊滅という状況からもほど多く、かつ日に日に国際社会からも、国内からも非難が強まって、自身の権力基盤が揺らぐ事態が鮮明になった時、もしネタニエフ首相が「イスラエルを取り巻く安全保障体制の立て直しのためには一旦、行き詰った状況をリセットする必要がある」と強く信じ始めたら、とんでもない事態が中東、東地中海地域で引き起こさせる可能性が否めないと考えます。
そして同じことがロシア・ウクライナの間でも起きた場合、自身は後ろ向きだと言われてきましたが、政権維持への圧力と周辺を固める超強硬派からのプッシュに後押しされる形で、ロシアが対ウクライナ政策のリセットを行おうとしたら、ここでもまたパンドラの箱が開かれ、世界は混乱と絶望の世の中に引きずり込まれていくことになる可能性があります。
欧米諸国とその仲間たちも、UNも、その他の国々も、イスラエルに対しても、ウクライナに対しても、口は出して非難はしても、結局、何も直接的にできないのであれば(軍事支援の継続など)、少なくともイスラエルには一線を越えるべきではないとの圧力をかけ、レッドラインを越えた場合には、見放すくらいの強い立場を鮮明にして、extremeなレスポンスを思いとどまらせないといけませんし、ウクライナに対しては、ロシアに対して逆に攻撃を仕掛けるという一線を越えて戦争を国際戦争にエスカレーションさせないように圧力をかけ続けないといけません。
実はこの点で、日本はとてもいい立ち位置にいるはずなのですが…これまでのところ、少なくとも私の目には、それを理解して動いているようには見えてきません。
調停現場の非常に重々しい空気を感じ、直接浴び、いろいろなことを考えてしまっています。
以上、今週の国際情勢の裏側でした。
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