東京地検特捜部が威信回復を目指した「金丸事件」
「金丸事件」は、いうまでもなく、かつての自民党のドン、金丸信氏を東京地検特捜部が脱税容疑で電撃的に逮捕した出来事である。
金丸氏が自民党副総裁だった1992年8月、東京佐川急便から5億円の献金を受け取りながら収支報告書に記載していないことが発覚。金丸氏が副総裁を辞任し、政治資金規正法違反を認める上申書を提出したため、東京地検は略式起訴にとどめた。
その結果、金丸氏は裁判所から罰金20万円の略式命令を受けるだけですんだが、この刑罰の軽さに世間が猛反発し、検察庁の石表札に黄色いペンキが投げかけられる騒ぎにまで発展した。
威信回復をめざした東京地検特捜部は、金丸氏が政治資金を流用し個人資産を蓄財していたとみて、脱税容疑で捜査をする方針に切り替え、1993年3月6日、逮捕した。
大手ゼネコンから闇献金を受け取り、約18億4230万円の所得を隠したとみられていたが、裁判の途中で金丸氏が亡くなったため、審理は打ち切られた。
家宅捜索で時価1千万円相当の金の延べ棒が発見されたことも、ニュースにインパクトを与え、同年7月の総選挙で自民党は単独過半数を失った。
そして、非自民・非共産8党派の連立政権である細川内閣が誕生し、自社対立の「55年体制」は崩壊した。
それから長い歳月を経た今でも、自民党の金権腐敗体質は変わらない。企業からの闇献金は、派閥パーティー券売上のキックバックや“中抜き”の裏金に姿を変えただけである。
政権に遠慮し、肝心の二階氏や安倍派の幹部たちをいずれも無罪放免にした検察の姿勢と、それに国民が憤慨した構図も金丸事件と同じだ。
ならば、今後は「政策活動費」も含めた脱税捜査に移るべきであろう。二階氏はその最大のターゲットだ。
この記事の著者・新恭さんのメルマガ