大切なことはすべて生成AIが教えてくれる。紙のビジネス書や実用書が売れなくなってしまった訳

 

■「ビジネスパーソンならばこの人に注目!」と言える人の不在

まず、思いつくのがカリスマの不在です。

2010年頃のビジネス書であれば、カリスマ的存在があり、その人の本ならばかなりの売れ行きが見込めました。勝間和代さんしかり、本田直之さんしかりです。

もちろん、2024年現在でもインフルエンサー的な人(ひろゆきさん、メンタリストDaiGoさんなど)は存在しますが、そこまで大きなヒット作を生むこともなく、その内容に注目されることも少なくなっているのが印象です。簡単に言えば、「ビジネスパーソンだったら、この人に注目しよう!」と共通的に言える人がいないのです。

同様に、『7つの習慣』をベースにした手帳術や『ストレスフリーの整理術』におけるGTDのような、カリスマ的な技法・ノウハウも現状ではほとんど見かけません。ギリギリ『バレットジャーナル 人生を変えるノート術』はヒット作に入るかと思いますが、どちらかと言えばノート術界隈での盛り上がりで、ビジネスシーンにまでは広がっていないというのが実情ではないでしょうか。

結局のところ、人に関しても、技法に関しても、カリスマ的な存在が不足しており、それはつまり皆の注目を集めるような存在がないわけで、巨大なヒット作が生まれないのも一つの自然な帰結に思えます。

もちろん、今でも10万部を越えるようなビジネス・実用書自体は存在しています。しかし、皆がそれについて言及するような事態には至っていません。売れるのは売れるけれども……て留まっていて、それ以上のムーブメントにはつながっていない状態です。

唯一の例外は、2020年に発売された『独学大全』で、この本はさまざまな言及がなされていました。売れただけでなく、話題になっていたわけです。

ただし、著者の読書猿さんはネットの一部ではたしかにカリスマ的存在であるものの、いわゆる「社会的に成功した人」というイメージを持つカリスマではありませんし、紹介されているのも単一の技法ではなく、さまざまな場面に「効く」複数の技法であって、ここにもカリスマ性は見つけられません。つまり、『独学大全』のヒット自体が、カリスマの不在をより強調しているわけです。

そこから考えられるのが、現状は単にカリスマが存在していないだけでなく、そもそもカリスマなるものが求められていないのではないか、という推測です。この推測は後の項目とも関係しています。

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