大切なことはすべて生成AIが教えてくれる。紙のビジネス書や実用書が売れなくなってしまった訳

 

■圧倒的に分かりやすい「動画」に完敗

さて、ビジネス・実用書は、ビジネスに関する情報や、実用的な情報を伝えるための書籍です。でもって、そうした情報を伝えられるのは書籍だけではありません。他の媒体も存在しています。

その中でも、真っ先にライバルとして登場したのがブログでしょう。一時期Amazonのレビューでも「こんな情報ならブログを読んでいればいい」のようなコメントを多く見かけました。実際、気合いの入ったブログ記事の方が情報が充実しているということはたしかにあります。その意味で──本来であれば──商業出版と切磋琢磨し合うよきライバルが登場したといえるでしょう。

とは言え、Google広告圏の拡大の影響で、アフィリエイト目的の記事が爆発的に増加し、それに伴って「気合いの入ったブログ記事」は年々減少していき、情報源としての魅力はここ数年で一気に減退しました。実際、記事を書く方もインセンティブの影響で、書きたい気持ちが薄れてしまった事態もたくさん起きているでしょう。

その代わりに台頭してきたのが動画です。代表格はYouTubeですが、Udemyなどのオンライン講義プラットフォームも見過ごすことはできません。こうした動画サイトでも、ビジネス・実用に関する情報はたくさん発信されており、内容的には書籍とバッティングしています。

むしろ、ツールの使い方などに関しては書籍よりも動画の方がはるかに「わかりやすい」という事実があります。これはもうどうしようもありません。「動作」を伝えるために何枚ものスクリーンショットを並べる代わりに、その動作を実際に動画で見せる方がはるかに手っ取り早いのですから。

ブログに関しては、書籍と同じで「文字で伝える」媒体であり、同じ土俵に乗っていたと言えます。しかし、動画は異なるメディア表現であり、そもそも土俵が違っているのです。それまでは他に選択肢がなかったので仕方なく書籍として表現されていたような情報が、動画にシフトしていく動きは避けがたいでしょう。

また、ブログにしても動画にしても言えるのが、巨大で支配的な存在というよりも、それぞれの人の好みに合わせたニッチな存在が確立されている点です。

たとえば、いつもYouTubeを見ている二人がいるとして、その人たちが知っているYouTuberは大きく異なる可能性があります。「料理動画好き」のようなクラスタ内であっても、そうした差異が起こりえるのです。

この点もカリスマの不在と関わっているでしょう。ネットの普及によって、マスレベルのカリスマが減退した分、細かい好みに合わせたマイクロ・カリスマが乱立している状態なのです。

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