日常生活において新型コロナウイルスによる制約はほぼなくなりましたが、過去に感染した人の中には長引く後遺症に悩まされ、生活に影響が残る人も少なからずいるようです。よく言われる症状の1つが物忘れがひどくなったというもの。今回のもりさわメンタルクリニックの無料メルマガ『精神医学論文マガジン』では、イギリスで11万人以上を対象に、コロナ感染後の認知能力の低下について調査した結果を伝えています。
新型コロナ感染後の認知能力
◎要約:『新型コロナウィルス感染症後の認知能力低下はIQで3~9ポイント程度であり、症状の持続期間や重症度、ウィルスの種類によって異なる可能性がある』
COVID-19感染による身体的症状が回復した後でも、記憶力が低下したり、それまでできていたことができなくなったりする症状が報告されており、“ブレイン・フォッグ”と呼ばれることがあります。
今回は、COVID-19感染後に生じる認知能力の変化について、大規模なデータを用いて調べた研究をご紹介します。
COVID-19後の認知と記憶
Cognition and Memory after Covid-19 in a Large Community Sample
イギリスにおける研究で、オンラインでの認知能力テスト(記憶や論理的思考等の8つの領域)を112,964人が最後まで行いました。結果として、以下の内容が示されました。
- COVID-19感染があった場合には、感染がなかった場合に比べてIQで3ポイント相当の認知能力低下がありました。
- COVID-19感染症の症状が長期にわたって持続している場合には、感染がなかった場合に比べてIQで6ポイント相当の認知能力低下がありました。
- COVID-19感染症により入院の経験がある場合には、感染がなかった場合に比べてIQで9ポイント相当の認知能力低下がありました。
- オリジナルのCOVID-19かB.1.1.7の方が、その後の変異種(オミクロン等)に比べて認知能力低下が大きくなっていました。
- 特に記憶、論理的思考、遂行能力で低下が大きくなっていました。
対処の方法が明確でない後遺症ですが、多くの人々が実際に苦しんでおり、このような証拠があることを再確認できた内容でした。
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