「歴史修正抜き」「核抜き」は絶対。“もしトラ論議”で自称保守派こそが目を覚ますべき理由

 

「韓国の売るケンカを買い続ける」という危険

3つ目は「国のかたち」の論議です。具体的には韓国併合以降の歴史認識の問題と、核武装論です。「もしトラ」論議を契機に「自主防衛」を真剣に考えないといけないというのは、これは逃げられないと思います。ですが、まず歴史認識に関して言えば、例えば「韓国の売るケンカを買い続ける」とか「靖国参拝を正当化し続ける」というのは、非常に危険です。

とにかく、自主防衛論、憲法改正というのなら、保守の勝利になる、ならば歴史認識も修正主義で枢軸日本の名誉回復でオッケー、というのは余りにも考えが浅すぎます。歴史修正主義を抱えていては、韓国との同盟は簡単に壊れてしまいますし、NATO入りなど夢のまた夢だからです。

そんな中、自衛隊は陸自も海自も靖国に集団参拝している、それどころか、海自の将官が靖国の宮司に天下りなどという、前代未聞の状況になっています。これでは、安全保障の正反対で、危険を保障するような話が公然と起きていることになります。勘違いも甚だしいと思います。

一連の「もしトラ」情勢の中で、自主防衛論議を進め、NATOなど西側の同盟の枠組みの中で相互防衛義務も負う、その上で、相互防衛義務を負うことで、日米安保も維持できれば御の字…これは話としては成立すると思います。ですが、そのためには、西側の相互防衛義務を負う自主防衛であるならば、枢軸の名誉回復とか、東條以下の合祀されている靖国に現代の日本の軍人が参拝というのは諦めてもらわないと困ります。

そんなことをしていたら、NATO入りとか韓国との連携などは吹っ飛んでしまうだけでなく、権威主義的な陣営が日本をターゲットにする口実を与えるだけです。孤立するだけでは済まず、国を失うことになります。東條英機などは、何のために犠牲になったのかと嘆いて化けて出るでしょうし、昭和天皇などは全人生をかけて戦後世界に日本の居場所が残るように生命を燃焼させたわけですが、そうした人々の犠牲も吹っ飛んでしまいます。

「核武装が日本の安全を確保する」という保守論客の勘違い

もう一つは核武装の問題で、トランプは相手が狼狽するのを見るために、「日本と韓国から米軍を撤退させる代わりに核武装を許す」などと言っています。そして、「もしトラ」の場合には核武装が日本の安全を確保するなどという「保守論客」がたくさんいます。これも勘違いです。

日本は衰えたとはいえ、技術大国です。そして平和目的の核サイクルの結果としてプルトニウムをかなり保有しています。ですから、そんな日本が核武装を宣言したら、世界の核の均衡は一変してしまいます。何よりもNPT(核拡散防止)の枠組みは瞬時に崩壊し、世界各国は核武装に走ると同時に、核の闇市場なども形成されてカオスに陥るでしょう。

とにかく、佐藤栄作が命をかけて取り組んだNPTというのは、確かに多くの例外が出てしまい、ボロボロではあります。ですが、曲がりなりにも今でも機能しています。日本の核武装宣言は、そのNPTを瞬殺してしまうことで、世界の安全の保障を壊してしまいます。

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