「歴史修正抜き」「核抜き」は絶対。“もしトラ論議”で自称保守派こそが目を覚ますべき理由

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いよいよ現実味を帯びてきたトランプ前大統領の再選。アメリカにあらゆる面で大きく依存する日本でも“もしトラ議論”がかまびすしい状況となっていますが、作家で米国在住の冷泉彰彦さんは、安全保障における議論が「悲惨なぐらいダメ」と厳しい評価を下しています。今回のメルマガ『冷泉彰彦のプリンストン通信』では、トランプ氏の返り咲きが日本にもたらしかねない危機的状況を、考えうる2つのシナリオを提示しつつ考察。「自主防衛論」を議論する上で重要となってくるポイントを解説しています。

※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:「もしトラ」騒動、現状は最悪

日本の代表として極めて見苦しい麻生太郎の「チョロチョロ訪米」

(~前略)日本においても「2期目のトランプ」への対策が必要なのは認めます。3月4日に発売になった『ニューズウィーク日本版』で特集がされており、私も書きました。

「日本企業への妨害」と「日本切り捨て」のリスク…トランプ復活で、日本は最大の標的に?

安全保障と貿易を中心に「もしトラ」懸念というのがあるのは事実だと思います。問題は対策、論議といった対応が現時点では「最低」であることです。特に安全保障論議が最悪です。

最悪というよりも、もう悲惨なぐらいダメだと思います。どのぐらいダメかというと、戦後多くの先人達が築いてきた平和と安定、そして豊かさの多くが吹っ飛んでしまうぐらいダメということです。3つ真剣に心配があります。

1つは、現時点での対策がひどいということです。何でも、この1月に自民党の麻生太郎氏がワシントンに行ったそうなのですが、その際に「トランプ前大統領には大統領時代、何度も会ったことがある。とても話しやすく、ユニークな人だ」などと、アメリカのメディアに対して、トランプへのヨイショをしたそうです。

更に、この1月のタイミングで、麻生氏は「トランプ陣営の関係者に面会したらしい」とか、「真剣にトランプ本人に会おうとしていた」と報じられています。こうした行動については、民主党のバイデン政権への配慮から「外交儀礼上マズイ」という声が、日本政府周辺から出ていたそうです。

本当にひどいと思います。バイデンを怒らせるとか、4月の岸田訪米をブッ壊すということが心配なのではありません。アメリカがここまで「おかしく」なっている中で、日本がそれなりに「二股をかける」のはサバイバル戦略として、別に恥ずかしいことではないからです。バイデンの周辺は怒るかもしれませんが、どうせ、麻生氏にしてみれば「岸田はもうすぐポイ」で「上川陽子氏に乗り換え」ということを考えているかもしれず、4月の岸田訪米の成果など期待していないのかもしれません。

そうではなくて、麻生氏がこのようにチョロチョロするというのは、日本の代表として極めて見苦しいからです。では、当選しただけで就任前のトランプに会いに行った安倍晋三氏とどこが違うのかというと、あの時は、安倍氏が早期に面会に行ったことは、「トランプとしては内心嬉しい」つまり「俺様を重視しているな」という好感という感じになって効果としてはプラスになった可能性が高いからです。

ですが、今回は逆です。「アソーというのは、爺さんだが元総理だろ」というぐらいは理解しているはずで、その「アソーが俺様を恐れて右往左往している」というのは、「面白え」と思っているはずです。安倍晋三氏の時は「あのヤロー、俺様の先手を打ってきやがって、やりにくいぜ」というような感触だったのかもしれませんが、今回は「これは面白えな、日本はこの際、徹底して困らせてやろうか」というような、軽視に加えて「危険な誘惑を感じ」させる効果があった可能性があると思います。

とにかく、麻生氏だけでなく、「もしトラ」問題の最大の問題は、これは現実に現在進行形で動いている「相手のある話」ということです。トランプという、史上最悪の変人奇人に対して、こちらの「手の内を見せる」とか「狼狽している姿をさらす」というのは、最悪手です。

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