中国による「サイバー攻撃」が日増しに活発化している。事実、日本が未加入の「ファイブ・アイズ」構成国の米国や英国では、中国人ハッカーの犯罪が次々と明るみに。これに関してメルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』は、「中国政府は否定するが、共産党指揮下の組織的かつ継続的なスパイ行為であることは、活動期間や資金面からも明らか」と指摘。日本の防諜体制はあまりに脆弱であり、不正アクセス等による情報漏洩のほか、一般の日本人を洗脳する「ウィキペディアの毒」にも注意が必要と警鐘を鳴らす。
このままでは日本の一人負け。中国サイバー攻撃の脅威
今回は、中国がサイバー攻撃に力を入れているというニュースと、それに反して、デジタル空間における情報について日本は無防備だというニュースの2つをご紹介したいと思います。
まずは、中国のハッカー集団「APT31」の中国人7人を起訴したというニュースです。
● 米司法省、中国のハッカー集団「APT31」を起訴 不法行為共謀罪
詳しくは、以下、報道を引用します。
米司法省は25日、中国のハッカー集団「APT31」による情報収集工作に加担したとして、34~38歳の中国人7人(いずれも中国在住と推定)を米国に対する不法行為に共謀した罪で起訴したと発表した。中国内外の反体制活動家やその支援者、米国の政府当局者や政治家らを標的として、遅くとも2010年から継続的にサイバー攻撃を仕掛けていたという。
司法省によると、APT31は中国湖北省武漢を拠点とする中国国家安全省が運営するサイバースパイ組織。外国人に対して、報道機関やジャーナリストを装って、1万通以上のメールを送っていた。
受信者がメールを開封すると、位置情報やIPアドレス、利用デバイスなどの情報がAPT31が管理するサーバーに転送される仕組みだった。APT31は転送された情報を基に標的のデバイスやルーターをハッキングして、経済や貿易、知的財産などに関する情報の窃取に利用していた。
ホワイトハウスや司法省、商務省などの米政府当局者、米国の連邦議会議員に加え、高官や議員の配偶者が標的になったケースもあった。欧州や日本の国会議員が参加する「対中政策に関する列国議会連盟(IPAC)」も狙われていた。
中国にいながら、アメリカに住む反体制運動家などを付け狙い、ハッキングによってあらゆる個人情報を窃取したというのです。この起訴された7人は、「過去14年間、アメリカ政府関係者や政治家らを対象にしたサイバー攻撃をしかけていた」、というのだから、組織的かつ継続的な活動を行っており、それを支える資金もどこからか拠出されていたと想像できます。
彼らを起訴できたのは、米国、英国、オーストラリア、ニュージーランド、カナダで構成する情報共有の枠組み「ファイブ・アイズ」があったからです。
● 中国スパイ活動に「ファイブ・アイズ」対抗、米司法省がハッカー集団「APT31」の7人起訴
アメリカが7人を起訴したことにより、「英政府も25日、この企業とハッカーらを制裁対象にしたと発表」。「英政府は声明で、今回の摘発は『ファイブ・アイズ同盟国の支援を受けた」と明らかにした』、とのことです。
イギリスも中国からのサイバー攻撃被害には業を煮やしていました。実際にイギリスが受けた被害については、以下、報道を一部引用します。
● 「英国有権者4000万人の個人情報奪われる…背後に中国」(中央日報日本語版) – Yahoo!ニュース
2021-22年に自国の有権者4000万人の情報が露出したサイバー攻撃の背後にも中国がいると明らかにした。
(中略)
英政府も2021年、中国に強硬な立場を見せた英議員のメールに対するハッキングの動きの背後に中国がいて、これをAPT31が主導したと明らかにした。これを受け、APT31と関係がある企業1社と個人2人を制裁したと明らかにした。
また2021年から22年まで英国選挙管理委員会をハッキングした背後もAPT31とは別の中国関連のハッキンググループだったと指摘した。英国選管委は昨年8月、ハッカーが2021年8月から22年10月まで選管委システムをハッキングし、選挙人名簿に接近したと明らかにした。
これを受け、2014ー22年に有権者として登録された英国と海外の有権者4000万人の名前と住所が露出した。ダウデン英副首相はこの日の議会で「今回の2件のサイバー攻撃は(英国に)敵対的な意図を表す中国の明確で持続的な行動パターン」と述べた。
もちろん中国政府は、このことを全面否定していることは言うまでもありません。
しかし、残念ながら「ファイブ・アイズ」には日本は入っていません。スパイ防止法もない日本が、「ファイブ・アイズ」に入る資格があるとは思えません。機密情報がダダ漏れだからです。
逆に言えば、今回のような事件が起こっても、日本は見抜くことすらできない可能性があるということです。すでに同様のサイバー攻撃があっても、日本は手も足も出ない可能性が高いのです。
デジタル空間でも「受け身」な日本人の弱点とは?
これまでも本メルマガで何度も述べてきましたが、日本政府は、常にサイバー攻撃対策が甘いと言われています。政府も対策を講じていなければ、日本人もデジタル空間の情報に対して「受け身」だという分析もあります。
以下、国際大学の山口真一准教授による分析からの引用です。
● 日本の弱点は「情報に受け身」、デジタル空間についての教育充実が対策に…国際大・山口真一准教授 : 読売新聞
国際比較調査で、日本の弱点が明らかになった。情報やニュースにどう接しているかをみると、日本は受け取った情報を別のソースで確認する検証行動をすることが少ない。デジタル空間を特徴付ける「アテンション・エコノミー」などの概念を理解している割合も低かった。
偽情報を示して真偽を判断する設問では、日本は「正しい」と信じていたのが37%、「わからない」が35%だった。自ら情報を確かめず、受動的に漫然と過ごしている層が多いと解釈せざるを得ない。
日本は中立で信頼できるマスメディアから受動的に情報を得る時代が長く続き、その意識のまま玉石混交のデジタル空間で情報を摂取するようになったことが一因と考えられる。
米韓では「情報は何らかの意図を持って発信される」と考える傾向がある。日本より、政治的な分断が進んでいるからだろう。日本でも今後は生成AI(人工知能)の発展で、偽情報が選挙に影響を与える可能性があり、混乱を招きかねない。
傾向が判明したことで、対策を講じる際、どこに力点を置けば良いか見えてきた。それは、デジタル空間の成り立ちについての教育の充実だ。ファクトチェックの強化や、AIが作ったコンテンツの表示義務化なども欠かせない。
AIが社会に与える影響に関しては、韓国は肯定的な人が多かった。IT産業で発展してきた国だからだ。米国では肯定派と否定派が 拮抗きっこう している。現実にAIで職を失う事例がすでに起きている一方、生産性が向上していることもあり、評価が二分したのではないか。
これに対して日本は「どちらともいえない」が44%を占めた。AIに関する法律の議論も欧米に比べて進んでおらず、現実の「遅れ」が評価に反映したといえる。
大学生がチャットGTPを丸写しして論文を書くため、大学側が頭を痛めているというニュースもありました。
● チャットGPT、学生の利用に対策…上智大「論文使用なら厳格な対応」
ウィキペディアに仕込まれる「中国の毒」に警戒せよ
ネットで情報を調べる際によく使われるウィキペディアも、ウソ情報で汚染すると、ウソ情報を自然な文章の中に溶け込ませて、読者を洗脳することができるとの報道もあります。
そのウソ情報を記事では「毒」と表現していますが、選挙を恣意的に左右するような情報を盛り込んだとしたら、それは「毒」ですよね。以下、それについての記事の一部を引用します。
● ウィキペディアをウソ情報「毒」で汚染すると…生成AIはウソを学習、偽情報をアウトプット
ウィキペディアは、世界中の利用者が編集に参加しており、偽情報を表示させ続けることは難しい。しかし、特定のタイミングでウソを書き込むことで、それが可能になるという。
論文の共同執筆者の一人で、スイス・チューリヒ工科大のフロリアン・トレイマー准教授は「ウィキペディアにはすでに実験結果を伝え、注意を促した」と語った後で、こう付け加えた。「ネット上には膨大なデータがあり、いくらでも毒を仕込むことができる。政治的な目的で行われることも懸念される」
攻撃からAIを守るため、日米英豪など11か国は1月、国際指針に署名した。この中でデータポイズニングは、AIがさらされている五つの脅威の筆頭に示された。指針は「AIが不正確で偏った、悪意ある回答をする可能性がある」と警告する。
指針は、米マイクロソフトが2016年に公開した、SNSで利用者とやり取りするAI「 Tayテイ 」のケースを例示する。利用者の不適切な発言が「毒」となり、偏った回答をするようになった。公開中止になる前にTayはこう言った。<ヒトラーは正しかった>
最後の例が恐ろしくて震えました。情報の取捨選択の重要さや、サイバー攻撃に対する対策の重要さについて日本政府と日本人は、認識を改めるべきです。
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※ 本記事は有料メルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』2024年3月27日号の一部抜粋です。初月無料の定期購読のほか、1ヶ月単位でバックナンバーをご購入いただけます(1ヶ月分:税込660円)。
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