正体隠しの勧誘は教団内ではこうして行われた
現在、集団調停の申し立てを行っている被害者の状況を分析すると、入信した方のほとんどが宗教勧誘という目的、勧誘の主体が統一教会ということが秘匿され、正体を隠されたまま教え込みを受けたことが確認されたといいます。「こうした勧誘方法は信教の自由、あるいは自由な意思決定を侵害しているものと考えている」ゆえに、同弁護団は「正体隠した勧誘」の禁止を求めています。
では、どのような「正体隠し」が、旧統一教会内で行われていたのかについて、私が1999年に東京地裁に起こした、教団名を隠した違法伝道訴訟の裁判なかで提出した証拠資料をもとに話をしたいと思います。
信者らは街頭で「手相の勉強をしています」「自己啓発のビデオセンターです」と声をかけて、布教の目的を告げずに勧誘場所に連れ込みますが、勧誘マニュアルには、次のように書かれています。
1.声かけ(例)こんにちは(命がけの笑顔で)、(例)不躾(ぶしつけ)に申しわけありません。千代田文化放送なんですけれど、今、ビデオライブラリーの紹介インタビューをしているんです(取材協力お願いします)
千代田文化放送などというものは教団には存在しません。つまり、教団名を隠して誘うためにつく、ウソになります。
さらに(勧誘の際の)ポイントとして「言葉は何でもかまわないと思います」とあり、旧統一教会の伝道をする上ではこうした様々な「ウソ」が許され、推奨されてことがわかります。さらに「間をおかず、選ばず、現実をみず」と多くの人に声をかけるようにも促しています。
神様の前に、サタンに支配された世界の人たちを救い、旧統一教会の信者とするためには、ウソをつくことは正しいと教えられてきたわけです。
ウソの上塗りの勧誘の実態は、「宗教団体の目的を著しく逸脱した行為」と思う理由
私はこの偽装勧誘という呼ばれる正体隠し勧誘の問題の本質は、「自由な意思決定を侵害している」以外に、もう一つあると考えています。それはウソの上塗りです。入口で一つのウソをつくことで、次の嘘もつかなければなりません。
先のマニュアルでも、ビデオセンターが旧統一教会であることを伏せるために「千代田文化放送なんですけれど」と声をかけて勧誘するように指示しています。もし通っている人から、もし「ここは統一教会ではないのですか?」「宗教ではないのですか?」と尋ねられれば「違います」と答えるように指示されていましたが、このように次のウソをつかなければならない状況となります。
宗教法人法の第81条1項2号前段の解散事由には「宗教団体の目的を著しく逸脱した行為」とあります。「ウソをつき続ける」「ウソの上塗り」の指示を組織的に行ってきたこと自体が、もはや健全な宗教団体の姿ではないと考えます。
そうした教団の本質を見抜けずに、多くの政治家が旧統一教会との関係を持ち、国政にも影響を及ぼそうとした状況にあったことを防げなかったことは本当に問題であると思っています。
旧統一教会は2009年のコンプライアンス宣言を通じて今後は「教団名を隠しての伝道はしない」として、その再徹底を標ぼうしますが、これからの改善だけで終わりではありません。「ウソを重ねての布教」をして、多くの人たちを信者にしてきた過去の事実をしっかりと見つめなければなりません。そこからもたらされた被害がすべて回復される必要があります。
こうした点からも、解散命令の司法判断が行われるだろうと確信を抱いている理由になっています――(この記事はメルマガ『詐欺・悪質商法ジャーナリスト・多田文明が見てきた、口外禁止の「騙し、騙されの世界」』2024年5月28日号の一部抜粋です。続きはご登録の上お楽しみください、初月無料です)
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image by: Unification Church Hungary, CC0 1.0, via Wikimedia Commons