中国が目指す二度と外国勢力に蹂躙されない存在の確立
中国は自国の利害に照らし合わせると、国際社会における孤立を回避するにはロシアをウクライナで負けさせることはできないため、アメリカや欧州から非難されてもロシアを支え続けることになります。
ただ、ロシアには従わず、経済的にはロシアを取り込み、「中国の助け無くして、ロシアに勝利はない」というイメージをプーチン大統領以下、ロシアのリーダーたちに植え付け、アジア・中央アジア・コーカサスにおける中国の影響力を間接的に拡大するゲームプランを抱いています。
中国にとっては領土の拡大はさほど意味がなく、中国製品の売り先の拡大と資源の調達元の確保・拡大という経済的な目的が最大ですが、ロシアの失敗やアメリカによる過度の介入は、その目的を頓挫させる恐れがあることを理解しているため、上手にロシアを利用し、適度に北朝鮮に圧力をかけ、イランとは友好関係を強化し、ライバル・インドへのプレッシャーをかけるためにパキスタンを、債務漬けにして取り込んでおくという手段に出ています。
押しも押されもせぬアジア太平洋地域のパワーハウスで、二度と外国勢力に蹂躙されない存在の確立こそが、中国のEnd gameと言えるように思います。
ではもう一つの鍵を担うトルコはどのような思考でしょうか。
トルコも旧帝国であり、ロシア同様、エルドアン大統領の下、その再興を狙っていると考えられます。
以前、イスタンブールでの国際会議に参加した際に、トルコ政府の面々から言われたのは「トルコはアジアであり、ヨーロッパであり、アラブであり、そして今、コーカサスでもある。アメリカ大陸とオセアニアを除く残りのすべての地域と繋がり、その中心に、物理的にも経済的にも、そして政治的にも位置することで、四方八方に影響力を発揮し、伸長することができる。その実現こそがトルコが狙う理想的な未来の姿であり、今、トルコはその実現の途上にある」というEnd Gameのビジョンです。
これまでいろいろな機会にトルコとは密接に仕事をしてきましたが、時折、先に触れたビジョンが示され、その特異な立ち位置の持つ意味を考えさせられます。
トルコが再び世界帝国になることはないだろうと思いつつ、新ソビエト連邦なのか新ロシア帝国なのかはしりませんが、帝国の再興を願うプーチンのロシアとも、アゼルバイジャンをはじめとするコーカサス地方のトルコ系を結び付けてunited forcesにまとめあげることで、決して無視できない存在になってきていますし、中国にとっても、アジアと中東、地中海沿岸諸国を繋ぐ要所にいるトルコと手を結んでおくことで権益の拡大が図りやすいということも理解できているため、トルコをうまく取り込もうとしているのが分かります(ゆえに今週、王毅外相がアンカラを訪問して外相会談に臨んでいます)。
そしてトルコはロシアにも顔が利き、同時にウクライナにも影響力を有することで、ロシアによる侵攻直後は仲介の労を担いましたし、黒海の安全な航行の確保を行う際には、国連を引きずり出し、自らも協議主体に交えることで、ロシアとウクライナ双方に影響力を発揮しつつ、国連の後ろ盾も得るという芸当を行っています。
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