韓国に向け5月下旬からゴミや汚物をぶら下げた風船を飛ばし続けてきた北朝鮮。その報復として韓国は、南北軍事境界線で拡声器を用い北朝鮮の体制批判等を行う宣伝放送を6年ぶりに再開したと伝えられています。この韓国側の行いを「最悪」と言い切るのは国際関係ジャーナリストの北野幸伯さん。北野さんは無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』で今回、なぜそう判断するのかを解説するとともに、あまりに世界の大局が見えていない韓国大統領を問題視しています。
※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:愚かな「風船戦争」~「韓国―北朝鮮戦争」を望むプーチンは大喜び
北朝鮮の「汚物風船」に韓国が最悪の反応。プーチンが歓喜する「風船戦争」勃発
皆さんご存知だと思いますが、韓国と北朝鮮の間で「風船戦争」が勃発しています。「GLOBE+」6月11日付。
北朝鮮は6月8日から10日にかけても汚物風船を韓国に飛ばした。韓国軍によれば、計640個の風船が確認された。
金正恩総書記の実妹、金与正(キムヨジョン)朝鮮労働党副部長は9日付の談話で、風船1400個に約7.5トンの紙くずをぶら下げて韓国に飛ばしたと明らかにした。
なぜ、北朝鮮は、韓国に汚物風船を飛ばすのでしょうか?
金与正氏は5月29日付で発表した談話で「韓国の連中はわれわれに対する自分らのビラ散布は『表現の自由』と騒ぎ、全く同じ、我々の行動には『国際法の明白な違反』というずうずうしい主張をしている」と主張。「汚らわしい汚物を拾いながら、それがどれほど不愉快で疲れるのかを体験すれば」とも語り、韓国の脱北者団体が北朝鮮に風船につけて送っている金正恩体制を批判するビラなどが、「汚物並みの衝撃」だったことを図らずも告白した。
要するに「韓国が北朝鮮に風船を飛ばすから、北朝鮮も韓国に風船を飛ばすのだ」と。
北朝鮮は韓国に「汚物」を飛ばしますが、韓国は北朝鮮に何を飛ばしているのでしょうか?「朝日新聞DIGITAL」6月6日付。
韓国の脱北者団体「自由北韓運動連合」は6日、北朝鮮に向けて、金正恩(キムジョンウン)総書記を批判するビラ20万枚などを大型の風船10個を使って飛ばした、と発表した。やめるように牽制(けんせい)していた北朝鮮の反発は必至で、また韓国に「汚物風船」を飛ばす可能性がある。
団体によると、南北の軍事境界線に近い韓国北部の京畿道(キョンギド)・抱川(ポチョン)から6日未明に風船を飛ばした。金総書記を批判するビラ20万枚のほか、Kポップや韓国ドラマ「冬のソナタ」の動画などを保存したUSBメモリー5千個、1ドル紙幣2千枚などをくくりつけて飛ばしたという。
Kポップ、韓国ドラマの威力は強力です。私たちの世代は、「慰安婦問題」とか「徴用工問題」などで、韓国嫌いが多いです。しかし、若い世代と話していると、韓国嫌いの人はほとんどいない感じです。多くの若い人が、BTSやその他の韓国系アイドルが好きで、韓国ドラマを見ているようです。
こういう、いわゆる「ソフトパワー」はあなどれません。たとえばソ連の人たちは、西側の音楽や映画を海賊版で入手していました。それでソ連の若者は、「嗚呼、西側に普通にある自由が欲しい!」と思っていたのです。彼らは、ソ連のリーダーたちについて、「奴らのせいで俺たちには自由がない。俺たちは貧しい」と確信し、憤っていました。
韓国の文化が北朝鮮に浸透していけば、北朝鮮の国民も、「俺たちに自由がなく貧しいのは、バカな金正恩のせいだ!」と考えはじめることでしょう。だから、北朝鮮は、「風船を飛ばすのをやめろ!」と要求しているのです。しかし、韓国側は、報復にでました。再び、「GLOBE+」6月11日付。
韓国も9日から、南北軍事境界線沿いでの軍の拡声器による宣伝放送を再開した。金与正氏は9日付の談話で「非常に危険な状況の前兆」と位置付けたうえで、「北朝鮮による新たな反撃を目の当たりにするだろう」と予告した。
「宣伝放送を再開した」そうです。