インドで2004年から本格導入された電子投票。世界初となる大規模な電子投票開始から20年となりますが、その信頼性を疑う声も少なくないようです。今回のメルマガ『浜田かずゆきの『ぶっちゃけ話はここだけで』』では国際政治経済学者の浜田さんが、先日行われたインド総選挙の結果をめぐり浮上した「電子投票機論争」を取り上げるとともに、外部から参戦したイーロン・マスク氏の言い分、さらにマスク氏の「いちゃもん」に対するインド政府の怒りを含んだ返答を紹介しています。
※本記事のタイトルはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:イーロン・マスク氏とインド政府の戦い:電子投票機は信用できるのか?
イーロン・マスク氏とインド政府の戦い:電子投票機は信用できるのか?
ぶっちゃけ、2024年は「選挙の年」と言われていますが、その投票の集計方法を巡っては各国で賛否両論が巻き起こっています。
日本では東京都知事選が始まったところですが、6月5日に結果が明らかになったインドの総選挙は世界の注目を集めたものです。
結局、モディ首相が3期目を勝ち取ったわけですが、その結果を巡っては野党の国民会議派からは「集計に際し、改ざんが行なわれた」といった批判が相次ぎました。
実は、インドの総選挙では2004年から集計には広く電子投票機が使われ始め、開票結果が素早く明らかになる仕組みが確立しているわけです。
しかし、こうした電子投票機の有効性については、インドの野党からは「怪しい操作が行われた。今後は機械に頼らず、紙の投票用紙を使い、人力で集計作業をすべきだ」といった意見が出ています。
しかも、この機会に外部から一戦に加わろうというのでしょうか、あの論争好きで知られるイーロン・マスク氏も疑問を呈しているのです。
曰く「電子投票機は人でもAIでも簡単に外部からハッキングできてしまう。選挙結果を覆すことなど朝飯前だ」。
インド最大野党の国民会議派のガンディー党首もマスク氏の発言に「わが意を得たり」とばかり、「電子投票機はブラックボックス化している。誰も内部を伺い知ることができない。選挙管理委員会に機械内部のメカニズムを開示するように求める」と反電子投票機運動を展開する意向のようです。
また、現在無党派の候補としてアメリカの大統領選挙を戦っているロバート・ケネディ・ジュニアも「最近のプエルトリコでの選挙は電子投票機によって不正に操作されたと思われる」と批判の刃を向けています。
こうした電子投票機に対する不信感の高まりを受け、インドの政府機関である電子情報技術省では「インドが開発したマシーンは外部のネットワークからは遮断されているため、ハッキングや改ざんはできない。もしイーロン・マスク氏ができるというなら、是非ともハッキングして見せて欲しい。もし、ハッキングできたら100万ドルをプレゼントします。ただし、できなかったら当方に100万ドルを支払ってもらいたい」。
電子大国を目指すインドとすれば、自国製の電子投票機にいちゃもんをつけられたことへの反発は大きいようです。
インド最高裁では「インドの投票システムは正常に機能しており、電子投票機を疑う余地はない」とモディ政権が進める政治や投票の電子化を擁護する姿勢を明らかにしています。
この電子投票機論争はまだまだ長引きそうです。
ぶっちゃけ、日本でも早晩、電子投票機が導入されることになるでしょうから、そのメカニズムの透明性を担保する仕組みを準備しておくべきでしょう。
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