さらに、今回の判決では、2人の裁判官が個別意見を述べました。
裁判官出身の尾島明裁判長は、「性同一性障害特例法は、性別変更後に生殖補助医療を使って子どもをもうけることを禁じていない。変更前に生まれた子どもからの父親の認知も排除していない」と指摘します。生殖補助医療に関する議論についても、精子提供者の意思への配慮や提供者の意に反して使われた場合の親子関係が問題になっている」とし、今回はそうした問題の結論になるものではないとしました。
また、検察官出身の三浦守裁判官は、生殖補助医療をめぐる現状を「技術の発展やその利用の拡大で生命倫理や家族のあり方など、さまざまな議論がある。法整備の必要性が認識される状況にありながら20年を超える年月が経過する中で、すでに現実が先行するに至っている」と指摘しました。
さて、いかがでしょうか。みなさんはどう感じているでしょうか。
私は…色々と考えさせられました。法律が決めた「家族・親子」は、さまざまな側面で、「私」の生活に影響します。しかし、“何か”の問題に直面しない限り、それを実感することは滅多にありません。例えば、私の場合は、母の介護であり、母の入院であり、母の看取りでした。
「家族がいる」という前提がすべての手続きのベースにあり、「家族・親子」は戸籍で決まります。「戸籍」も「婚姻」も、たかが紙切れ一枚なのに、とてつもない重さがその一枚に存在するのですよね。
しかし、「戸籍上の家族・親子」=「心の家族・親子」ではない人たちもいます。「戸籍上は家族じゃない」けど、「私にとっては家族」という場合もある。
私は母のことがあるまで、「戸籍」と「家族・親子」を結びつけて考えることが一度もありませんでした。しかし、それはとてもラッキー、というかたまたま「私」の家族のカタチが法の枠内にあったから、その必要性がなかっただけ。
実際には「戸籍」には「医療」が付随し、「性別」には「法律」がまとわりつく。それが「血縁」を超え、「多様性」を制限し、「人」を差別している。ただただ幸せになりたいだけなのに…。
話題のドラマ『虎に翼』で、「法律とはきれいなお水が湧きでている場所」というセリフがありましたが、時代とともに「きれいなお水」のあり方も変わるのかもしれません。
みなさんのご意見、お聞かせください。お待ちしています。
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image by : 裁判所 – Courts in Japan
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