なぜプーチンは一気に攻めないのか?ウクライナを「蛇の生殺し」状態に置く“恐ろしい”露の狙い

Kyiv,,Ukraine,-,Mar.,03,,2022:,War,Of,Russia,Against
 

ウクライナや中東をはじめ、世界各地で多発する紛争。そのほぼすべてが無数の一般市民の犠牲を出しながら、終わりの見えない状況が続いているのが現実です。今回のメルマガ『最後の調停官 島田久仁彦の『無敵の交渉・コミュニケーション術』』では元国連紛争調停官の島田さんが、かような紛争が終結することがない理由を「各国のリーダーたちの思惑」に注目し解説。さらに紛争調停に関わってきたことで見えた「現実」を誌面に綴っています。
※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/メルマガ原題:Opportunities Missed:広がる戦争の渦と悲劇の連鎖

プーチン、セレンスキー、習近平。リーダーたちの語られることのない真の思惑

2022年2月24日にロシアがウクライナ全土に侵攻した後、戦時リーダーの座に就き、その後、欧米諸国とその仲間たちを巻き込んでロシアとの対峙を選びました。

「主権国家としてのウクライナとウクライナ人を守るために戦う」というのは美しく、人の感動さえ呼ぶ姿勢ですが、その姿勢はどれだけの犠牲、特に生命という人的犠牲をウクライナの国民に強いたのかという観点からの分析をしてみると、少し違った絵が見えてきます。

実際に物理的にウクライナにミサイルを撃ち込み、地上戦でウクライナ人を殺害しているのはロシア軍ですが、少しアングルを変えて眺めると「主権国家としてのウクライナとウクライナ国民を守る」ことが真の目的であれば、ロシアのプーチン大統領が求めるのはゼレンスキー大統領の退陣と親ロシアのウクライナ政権作りだったわけですから、侵攻初期に辞任して、ロシアにそれ以上攻める口実を与えないようにしてしまうという手もあったはずです。

しかし、私たちが見ている通り、彼は戦時リーダーとして対ロ徹底抗戦を行い、欧米諸国とその仲間たちを巻き込んで終わらない戦争を、欧米諸国とその仲間たちからの支援頼みで継続し、そして5月に大統領としての正式な任期が終わった後も、戦時だからという理由でその座に留まり、対ロ抗戦を続けています。

アメリカからの大規模な軍事支援が届き始めて前線にどんどん投入していることと、アメリカ政府からロシア領内への反撃を承認されたこともあり、ロシアの進軍を食い止めているという効果は見えていますが、NATOの戦略担当幹部によると「ウクライナがロシアに対して戦い続けるには、アメリカからの軍事支援物資が予定通りに8月までに届いても、新たに高度に訓練された数十万人単位の動員が必要となるし、NATO各国からの継続的な軍事支援が必要となる」らしく、その計画の無茶さが分かるかと思います。

特に先の欧州議会選挙での極右勢力の大躍進を受け、フランスではマクロン大統領が打ち出した積極的なウクライナ支援を見直すべきという意見が高まっていますし、ロシアをあまり刺激したくないドイツのショルツ首相は、国民の声を受けてドイツが誇るタウルスミサイルの供与を認めないことを明言していることに鑑みると、欧州各国は“継続的な”支援を続けることは困難ではないかと理解できます。

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