なぜプーチンは一気に攻めないのか?ウクライナを「蛇の生殺し」状態に置く“恐ろしい”露の狙い

 

「ウクライナ国内での内部崩壊誘導」を狙うプーチン

ではロシア側はどうでしょうか?

戦力と兵力という点ではウクライナを今でも圧倒し、北朝鮮との“同盟”やイランからの支援などをベースに軍事的な補給態勢は侵攻前のレベルを上回るとされている中、戦争が長引くことについては余裕があると思われます。

ただこのところ侵攻のペースは緩んでおり、アメリカからの支援の影響が予測されているものの、プーチン大統領とその側近たちが仕掛ける意図的な遅延作戦、言い換えると、戦争を長引かせる・停滞させるための作戦とも理解できます。

これまでお話ししている通り、時間をかけてウクライナ国内でゼレンスキー大統領を引き摺り下ろす圧力がかかることを期待するという狙いもありますが、5期目を迎え、この世の春を謳歌し、強固な基盤を築いていると思われるにもかかわらず、国内の反プーチン・反体制派によるテロ事件(ダゲスタンでのシナゴーグとロシア正教会へのテロ攻撃や、ISが犯行声明を出したモスクワ郊外の劇場での銃乱射事件など)の対応に苦慮していることで、まずは国内治安を落ち着かせることに着手するため、対ウクライナ戦争の侵攻スピードを抑えて、時間を稼いでいるのではないかという見方もできます。

これまでのところ、プーチン大統領が行ってきたウクライナへの責任転嫁は不発に思われますが、かといって強権的にテロ勢力を抑え込める強いリーダーは今のところプーチン氏しか見当たらないこともあり、国内外での緊張が高まるにつれ、プーチン大統領の権力基盤はより強固なものになるという魂胆です。

ロシア国内のみならず、スタン系の国々でもNATOの中でも、ロシアは一気に攻勢をかけてウクライナを軍事的に倒してしまうことは可能だと思われるが、あえてそれを行わず、ウクライナを蛇の生殺し状態に置き、欧米諸国とその仲間たちに支援疲れを意識させて、ウクライナ国内での内部崩壊を誘導するのが真の作戦だと見られています。

国内の治安維持と強化には、あのワグネルを再編し、国家親衛隊に組み込んでおくことで、より士気の高い統制された軍隊として機能させることで対応し、国家親衛隊のエリートたちを対ウクライナ作戦に投入することで、軍事的な強度を高めようとしているようです。

ロシアにとっては、このままずるずると戦争を長引かせることもできるし、外圧を使って停戦協議に導くこともできますし、さらには最終手段として一気に軍事的なとどめを刺しにかかることもできますが、皆さんお気づきの通り、その出口にはどのシナリオを選んでも、ゼレンスキー大統領の居場所はありません。

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