異例人事で炙り出された「思惑」。安倍政権に“好都合な結果”で出世を重ねた「日本初の女性検事総長の夫」の名前

 

「日本初の女性検事総長の夫」が森友事件で果たした役割

こういう勘違いをしている人たちに簡単に説明しますが、自民党の裏金事件を捜査し、85人もの裏金議員たちをカタッパシから不起訴にしたのは、東京地検特捜部であり、東京地検の現在のトップは山元裕史検事正です。一方、岸田政権が検事総長に抜擢した畝本直美氏は、東京高検の検事長なので、今回の自民党の裏金事件には関わっていません。

ザックリ説明すると、検察庁は裁判所に対応して設置されていて、地方検察庁は地方裁判所に、高等検察庁は高等裁判所に対応しています。自民党の裏金事件を捜査した東京地検特捜部は、東京地裁に対応した組織であり、畝本直美氏が検事長をつとめる東京高検は、東京高裁に対応した組織なので、同じ事件を同時に扱うことはありません。

つまり、東京地検のトップである山元裕史検事正が、さらに上のポストに昇格したというのであれば「裏金事件で自民党に便宜を図ったご褒美の人事」と言われても仕方ありませんが、無関係な畝本直美氏への批判はスジ違い…ということなのです。

しかし、畝本直美氏には、こうした誤解が生まれてしまう土壌があったのです。畝本直美氏の2歳年上の夫、畝本毅(うねもと つよし)氏は、東京地検特捜部の副部長、東京高検の検事、大阪地検特捜部の部長、金沢地検の検事正などを歴任して、2017年には大阪地検の次席検事に就任しました。

2017年と言えば、当時の安倍晋三首相の妻の昭恵氏を名誉校長にした小学校の建設のために、9億円以上もする国有地がタダ同然で払い下げられた「森友学園問題」で、国会が紛糾していた年です。この問題を巡って財務省理財局の局長だった佐川宣寿氏や、近畿財務局が行なった公文書の改竄や隠蔽などの捜査を担当していたのが、大阪地検特捜部の山本真千子部長でした。そして、その直属の上司が、大阪地検の次席検事だった畝本毅氏だったと言われています。

翌2018年3月7日、近畿財務局の職員だった赤木俊夫氏が自殺し、上司から公文書の改竄を命じられていたことが発覚しました。そして同年5月31日、大阪地検は大阪中之島合同庁舎で「森友学園問題の捜査終結」の記者会見を行ないました。会見には、告発された財務省関係者38人全員を不起訴処分とした山本真千子部長、新河隆志副部長らとともに、直属の上司である畝本毅氏も同席しました。

しかし、山本真千子部長は「真相を解明するため慎重に検討した」と述べるばかりで、どうして関係者全員を不起訴処分としたのかについての具体的な説明はありませんでした。また、安倍首相など政治家の関与についても「お答えを差し控える」と、国会で良く聞くセリフを繰り返してお茶を濁し、9億円を超える国有地がタダ同然になった理由についても、まったく説明されませんでした。

そのため、野党からは「何も解明されていないのに安倍政権が検察とグルになり強引に幕引きを図った」と強く批判されたのです。しかし、安倍政権にとっては百点満点の結果となり、畝本毅氏は、翌2019年には大阪高検の次席検事へ、2021年には大阪地検の検事正へ、2022年には高松高検の検事長へと順調に出世し続け、2023年7月に定年退職しました。

この1年ごとの出世というバタバタした人事には、毎年莫大な退職金が貰えるというスーパーボーナスがもれなく付いて来るので、毎月の電気代やガス代にも苦しんでいるあたしのような庶民には、本当に羨ましい限りです…なんて愚痴もこぼしてみつつ、今回の畝本直美氏の検事総長就任のニュースと同じタイミングで報じられたのが、4年前の「東京高検の黒川弘務検事長の定年延長問題」に関する大阪地裁の判決のニュースでした。

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