異例人事で炙り出された「思惑」。安倍政権に“好都合な結果”で出世を重ねた「日本初の女性検事総長の夫」の名前

 

大阪地裁が出した自民党に忖度なしの「真っ当な判決」

今回の自民党の裏金問題を告発した神戸学院大学の上脇博之教授は、裁判に出廷するためにスーツを着ていても、トレードマークの頭のバンダナは外さないという徹底したバンダナ愛好者ですが、それはそれとして、上脇教授は、こちらの黒川弘務氏を巡る疑惑についても、自らが原告となって訴訟を起こしていました。

安倍首相が嘘と虚勢だけで8年近くも政権を維持して来られたのは、2014年に設立した「内閣府人事局」によって国家公務員の人事権を人質にし、各省庁の高級官僚たちを思い通りに操ったからですが、それは検察にも及びました。当時の東京高検検事長だった黒川弘務氏は、菅義偉官房長官と極めて近い関係で、安倍首相の希望は菅官房長官を通して黒川検事長へと伝達されていました。

安倍首相はこの便利な飼犬を失いたくなかったため、2020年2月に定年を迎える黒川検事長の定年を延長し、検事総長に就かせようと目論んだのです。そして、長年にわたる「国家公務員法の定年延長制は検察官には適用されない」という政府見解を、法務省に指示して2020年1月までに「検察官にも適用される」と変更させたのです。

この法務省内での協議に関する記録が開示されれば、安倍首相が人事権を人質にして法務省に圧力を掛け、白いものを黒と言わせた悪事の証拠が白日の下に晒される可能性もあるのです。そのため上脇教授は、2021年9月、その協議記録の開示請求を行ないました。しかし、法務省は「文書は作成していない」と嘘をつき、不開示とされたのです。そこで上脇教授は「公文書管理法で文書の作成が義務づけられている」と異議を唱え、2022年1月に提訴しました。

すると法務省は、定年延長制を検察官にも適用されるように変更した文書の存在は認めたものの「黒川氏のケースとは無関係」などと、これまた苦しい嘘をつき、開示請求の棄却を求めたのです。「無関係」だと言うのなら、それこそ堂々と開示すればいいじゃないですか(笑)。

そして、昨年12月には、当時の法務事務次官だった辻裕教(つじ ひろゆき)氏が証人として出廷し、「定年延長は当時の安倍首相が重用していた黒川氏を検事総長にするためだった」という上脇教授の主張に対して「そのようなことはない」と否定しました。こうした流れから今回の判決に至ったわけですが、大阪地裁の徳地淳裁判長は次のように述べました。

「当時の安倍晋三首相が閣議決定を行なった日は、黒川弘務氏の定年退官予定日のわずか7日前であり、黒川氏の他に該当者が1人もいないことから、検察官の定年に関する解釈変更は、黒川氏の定年延長が目的だったと考えざるをえない」

そして、徳地裁判長は法務省に「文書の開示」を命じたのです。ただし、安倍首相が法務省に指示したとされる文書の開示は、証拠がないとして退けられてしまいました。ま、どちらにしても、法務省はナンヤカンヤと屁理屈を並べて、毎度お馴染みの「海苔弁」を開示するのでしょうが、それでも、最近は沖縄の辺野古の新基地に関する訴訟など、司法たるものが自民党政権におもねった不当判決ばかり連発していたので、久しぶりに真っ当な判決を見て胸がスッキリしました。

それにしても、時の首相がここまで法を捻じ曲げて自分の飼犬を東京高検の検事総長にしようと目論んだのも束の間、肝心の黒川弘務氏本人が、新型コロナ禍で外出が制限されていた時期に、身内の新聞記者らと賭け麻雀を打っていたことがバレちゃって辞職って、あまりにもアッケない幕切れでしたよね。

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