東京都知事選に出馬し5位となる大健闘を見せたAIエンジニアでSF作家でもある安野たかひろ氏。そんな安野さんと世界的エンジニアとして知られる中島聡さんとの対談が実現したことは先日掲載の記事でお伝えしましたが、そこで中島さんが提案した「EQの高いAIの開発」に対して視聴者が大きな反応を見せました。今回のメルマガ『週刊 Life is beautiful』では中島さん本人が、なぜ日本は「IQではなくEQが高いAI」の開発に勝負をかけるべきなのかを改めて解説。「ドラえもん」を例に上げつつその創出がいかに賢い国際戦略にマッチしたものかを説いています。
※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:EQの高いAI
プロフィール:中島聡(なかじま・さとし)
ブロガー/起業家/ソフトウェア・エンジニア、工学修士(早稲田大学)/MBA(ワシントン大学)。NTT通信研究所/マイクロソフト日本法人/マイクロソフト本社勤務後、ソフトウェアベンチャーUIEvolution Inc.を米国シアトルで起業。現在は neu.Pen LLCでiPhone/iPadアプリの開発。
EQの高いAI
都知事候補だった安野たかひろさんとの対談で、私が「IQの高いAIよりもEQの高いAIが必要とされている。日本はそこで勝負すべき」という話をしたところ、ネットでの反応がとても盛り上がったので、少し解説します。
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この件は、以前から考えていたのですが、OpenAI/Microsoft連合やGoogleが、AGI(人間よりも賢い人工知能)を目指して凌ぎを削る中、日本が何をすべきか、どこで勝負すべきか、と考えてたどり着いた一つのアイデアです。
GPT-4やGeminiなどの「賢いAI」がどうやって作られたかを理解し、自分たちで作ってみるのも悪くはないと思うのですが、どうしても「後追い」になってしまいます。特に、この領域では、「データ量と計算資源」がものを言うことが明らかになっているので、高価なNvidiaのGPUを何十万台も買い込んで作ったスーパー・コンピュータを持つ巨大IT企業と同じ土俵で戦うのは、非常に難しいのが現状です。
一方で、「今の日本に何が必要か」と言うニーズに目を向ければ、少子高齢化による労働者不足です。特に、保育・看護・介護の三つの領域においては、慢性的な人不足と過酷な労働環境が当たり前になっており、社会全体として、必要とされるサービスが提供出来ない時代が来ようとしています。
当然ながら、それらの領域にAIとロボットを導入することは考える必要がありますが、保育・看護・介護へのAI・ロボットの導入は、それが幼児・病人・高齢者へのサービスであることを考えれば、工場へのロボットの導入と違い、慎重になる必要があります。
そこで重要なのは、IQ(Intelligence Quotient:知能指数)よりもEQ(Emotional Intelligence Quotient:感情指数)だと私は考えるのです。
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