中島聡氏が注目、安野たかひろ候補の「東京都知事選の戦い方」を政治家が学ぶべき理由。日本やっと始まるか?アーキテクチャを書き換えよ

20240705_annotakahiro-nakajimasatoshi-r_eye
 

日曜日に投開票が迫った東京都知事選挙。現職の小池氏とそれを追う蓮舫氏、さらに石丸氏が三つ巴の選挙戦を繰り広げる中、「Windows95の父」として知られるソフトウェアエンジニア中島聡氏の目に止まったのは、同じエンジニアでSF作家の安野たかひろ候補(33歳)だ。その先進性から一部では「台湾にオードリー・タンがいるなら、東京にはアンノがいる」と言われる注目の人。知名度ありきのマスコミ報道では“泡沫”扱いでも、いま着々と支持を広げている。(メルマガ『週刊 Life is beautiful』より)
※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです

プロフィール中島聡なかじま・さとし
ブロガー/起業家/ソフトウェア・エンジニア、工学修士(早稲田大学)/MBA(ワシントン大学)。NTT通信研究所/マイクロソフト日本法人/マイクロソフト本社勤務後、ソフトウェアベンチャーUIEvolution Inc.を米国シアトルで起業。現在は neu.Pen LLCでiPhone/iPadアプリの開発。

大手マスコミが報じない、安野たかひろ候補をあなたは知っているか?

立候補者が56人という乱立状態になった東京都知事選挙ですが、その中にこれまでの候補者とは大きく違うアプローチで選挙に臨む人物がいるので紹介します。

私自身は面識もないし、選挙まで名前も知らなかった人ですが、安野たかひろ(安野貴博)さんというエンジニア兼SF作家です。

彼は、93ページに及ぶマニフェストをGoogle Driveで発表しただけでも素晴らしいのですが、Markdown(エンジニアがドキュメントを書く際に使うフォーマット)で書かれたマニフェストをGithubのリポジトリ(エンジニアがソースコードを保存する場所)として公開し、都民の意見をIssue(意見)や Pull Request(マニフェストへの変更の提案)として受け付けるという非常にオープンなアプローチで都政に臨んでいます。

【公開】東京都知事選2024安野たかひろマニフェスト(詳細版)v1.1 – Google ドライブ

安野たかひろ:都知事選マニフェスト – Github

Githubというエンジニア向けのツールを使っているため、「エンジニア以外の人が意見を伝えにくい」という欠点もありますが、アプローチそのものには、他の政治家にも見習ってほしい点がたくさんあります。

大手マスコミは、いつものように、主要な候補以外は「泡沫候補」扱いで、彼のこともほとんど無視しているようですが、エンジニア界隈ではとても注目されています。

日本に限った話ではありませんが、政治が「政治のプロ」によって行われている限りは、真に国民のための政治を行うことは難しく、そんな中で、「政治の素人」だからこそできる安野氏の斬新なアプローチは新鮮で、これが日本の政治を大きく変えるきっかけになってくれれば良いと願うばかりです。

中島聡氏×安野たかひろ候補の対談が実現

(以下、MAG2NEWS編集部による追記)
安野たかひろ候補について、メルマガ配信時点では「面識もないし、選挙まで名前も知らなかった」と語っていた中島聡氏だが、その後、安野氏のYouTubeチャンネルで、2人の対談ライブが実現した。

その模様が、#安野たかひろ × 中島聡さん 緊急対談LIVE配信!(2024年7月3日)- YouTube でアーカイブ動画として公開されている。非常に興味深い内容になっているので、ぜひ自身の目で確かめてみてほしい。残念ながら現状、このような本質的な議論を大手マスコミが取り上げることはほとんどない。

古い政治のアーキテクチャを書き換えなければならない

今回の都知事選で、安野たかひろ候補がマニフェスト(公約)の管理に使用している「Github」はソフトウェア開発のプラットフォーム。Gitと呼ばれるツールでプログラムのソースコード(テキスト、もしくはテキストファイル)の変更履歴を記録・追跡できるバージョン管理システムの一種だ。非エンジニアの方は、MicrosoftワードやGoogleドキュメントの「変更提案・履歴」機能を思い浮かべるとその有用性を想像しやすい。

選挙におけるマニフェストは従来、政党や政治家から一方的に発表されることがほとんど。あるマニフェストがどういう経緯で作られ、誰の意見によって修正されたのか、一般の有権者から見るとブラックボックスになっていた。

だが、マニフェストとて言葉であり、プログラムのソースコードと同じ「テキスト」だ。Githubを用いれば、オープンソースコミュニティで複数のエンジニアたちが共同してプログラムを書くように、多くの有権者たちからマニフェストに対するIssue(意見)やPull Request(変更提案)を受け付け、優れた内容があればMerge(統合)することもできる。

すべての履歴が正確かつオープンに記録される仕組みにしておけば、公約破りや「言った言わない」の問題は起こりにくくなる。選挙戦中だけでなく、実際に議員になった際も、有権者の意見を政治に反映していく手段の1つとして活用できるだろう。

対談動画の中で、安野たかひろ候補と中島聡氏は、日本の政治におけるアーキテクチャ(基本設計)の古さを指摘。システム自体に大きな問題があるからこそ、人海戦術を前提とした都内1万4000箇所の「ポスター掲示板」が都政への新規参入を阻んでいるし、特定団体の「組織票」だけで選挙の勝敗が決まっている、とする。

東京都のプロジェクションマッピングに対する情報公開請求で、あまりに馬鹿げた「黒塗り資料」が堂々とまかり通っているのも、そのようなシステムの欠陥を如実に示すものの1つだ。そんな中で東京、ひいては日本の政治のアーキテクチャを書き換えようという安野たかひろ候補の挑戦は、もっと注目されていいのではないか。

本記事は『週刊 Life is beautiful』7/2号を一部抜粋・再構成したものです。初月無料のお試し購読で、本号の全文を含む7月配信分がすべて読めます。

 

この記事の著者・中島聡さんのメルマガ

初月無料で読む

※ワンクリックで簡単にお試し登録できます↑
¥880/月(税込)初月無料 毎週 火曜日(年末年始を除く)
月の途中でも全ての号が届きます

【関連】中島聡氏が注目、日本が潰した天才・金子勇氏による「人工知能の超絶技法」とは?Winnyだけではない失われた未来の叡智

【関連】中島聡さん、NVIDIAのGPUが用済みになるって本当ですか?AI開発の行列乗算をなくす「MatMul-free LM」で気がかりなこと

初月無料購読ですぐ読める! 7月配信済みバックナンバー

2024年7月配信分
  • 週刊Life is beautiful 2024年7月2日号: トランプ復帰の兆し、痩せ薬が社会に与える影響、Joshua Bellとの会食、Appleが構築している推論専用サーバー、英単語勉強アプリ、iPhone版(7/2)

いますぐ初月無料購読!

<こちらも必読! 月単位で購入できるバックナンバー>

2024年6月配信分
  • 週刊Life is beautiful 2024年6月25日号:人工知能入門:深層学習、人工知能と睡眠、最新のスライド執筆法、2030年の覇者、英単語勉強アプリとそのアーキテクチャ(6/25)
  • 週刊Life is beautiful 2024年6月18日号: WWDC 2024、OpenAI誕生物語、Teslaの株主総会、なぜNode.jsがもっと使われないのか?、生物が得たマクロ言語(6/18)
  • 週刊Life is beautiful 2024年6月11日号: オープンソース・エコシステムがうまく回る一番の理由、河野太郎大臣との対談、書籍のビデオ講座化(6/11)
  • 週刊Life is beautiful 2024年6月4日号: NvidiaのCUDAが今の地位を築いた経緯、分散型AIマイニング・サービス、データフロー・プログラミング(6/4)

2024年6月のバックナンバーを購入する

【関連】中島聡氏が暴く「AIバブル」の正体。株価急落NVIDIAの強さと死角とは?いまだ序盤戦のAIブーム 投資の注目点を解説

image by: 安野たかひろ@東京都知事候補(@takahiroanno)- X

中島聡この著者の記事一覧

マイクロソフト本社勤務後、ソフトウェアベンチャーUIEvolution Inc.を米国シアトルで起業。IT業界から日本の原発問題まで、感情論を排した冷静な筆致で綴られるメルマガは必読。

有料メルマガ好評配信中

  初月無料で読んでみる  

この記事が気に入ったら登録!しよう 『 週刊 Life is beautiful 』

【著者】 中島聡 【月額】 初月無料!月額880円(税込) 【発行周期】 毎週 火曜日(年末年始を除く) 発行予定

print
いま読まれてます

  • 中島聡氏が注目、安野たかひろ候補の「東京都知事選の戦い方」を政治家が学ぶべき理由。日本やっと始まるか?アーキテクチャを書き換えよ
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け