■神Excelという「いかにも日本的な技術」の発揮
一方で、Excelは「表」というビューを持っています。この「表」をうまく使えば、アナログっぽいことが簡単にできます。たとえば、Wordで一行目に何かを書き、そのずっと下にさらに一行書きたければ、改行をやたらめったらいれる必要があります。一方でExcelならば、書き込みたいセルにただ書き込めばOKです。空間的配置が容易なのです。
日本で神Excelのようなものが生まれたのは、その意味で必然だったのでしょう。デジタルツール的思考を経ないままに、Excelと「出合って」しまったら、アナログ的感覚が強いままにツールを使ってしまう。それは創造性の発露であり、いかにも日本的な技術の発揮ではあると思うのですが、そうした状態を何も変えないままに「DX」などと叫んでもうまくはいかないでしょう。「デジタル的感覚」が中空な状態では、DXもまた空虚なものになってしまいます。
逆に言えば、デジタル的感覚が磨かれた後であれば、DXもスムーズに行われるのかもしれません。でもってそれは、現代的な教育を受けた人たちが働き出し、システムに関する決定権を持つようになると自然に生じる事態だとも思います。
だから現状はいろいろな意味で節目なのでしょう。いやおうなしにやってくる変化の手前のタイミングなのです。
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