【経済スパイ事件】ロシアが狙うアメリカへの対抗措置はリーマンショックの再現

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高頻度取引を誤作動させることは可能

このような形で非合法工作員を発見されることは、ソ連時代にはなかった失態であり、ロシアの在米非合法工作員が本国と連絡をとる機能が、2010年に非合法工作員10人がFBIに逮捕されて以来、回復していないことを示している一面は否定できない。

しかし、この失態をもってSVRを見くびるべきではない。訴追状によると、SVRはブリヤコフ氏に、ウォール街の高頻度取引のコンピュータ・プログラムや「市場を混乱させる方法」に関する情報を収集させていた。

そして、必要な情報が手に入りさえすれば、SVRには高頻度取引のコンピュータ・プログラムを意図的に誤作動させ、金融市場を混乱させることは可能だと考えなければならない。

その危険性は、2012年8月1日には証券仲介企業ナイト・キャピタルで、停止されていたはずのプログラムが作動し、従業員によって停止されるまでの45分間に、誤発注によって4.6億ドルの損失が発生した事件によって証明されている。高頻度取引が意図的に混乱させられ、金融機関が次々と破綻すれば、リーマンショックが再現されかねないのだ。

ロシアのメドベージェフ首相は1月27日、欧州議会などがロシアを国際銀行間通信協会(SWIFT)から追放するよう求めていることについて、ロシアがSWIFTから追放された場合、「ロシアは経済的にも、他の手段でも、無制限に報復する」と反発している。

3人のロシア・スパイの訴追は、ロシアが単なるブラフに終わらない対抗措置を準備していたことを物語っており、米国は対策に追われている。

静岡県立大学グローバル地域センター特任助教・西恭之

 

『NEWSを疑え!』第368号より一部抜粋

著者/小川和久(軍事アナリスト)
地方新聞記者、週刊誌記者などを経て、日本初の軍事アナリストとして独立国家安全保障に関する官邸機能強化会議議員、日本紛争予防センター理事、総務省消防庁消防審議会委員、内閣官房危機管理研究会主査などを歴任。
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