ハリスが次期大統領なら欧米諸国は次々と“脱落”、逆にトランプでも好ましい戦争帰結は望めぬ「ウクライナの暗い未来」

 

中国の仲介にも交渉テーブルに着く用意のないウクライナと露

ここ最近、また中国がパレスチナ問題やイランとサウジアラビア王国の確執などの紛争解決の仲介に奔走していますが、ロシアとウクライナの戦争にも再度、積極的に関与し始めています。

今週には王毅外相とクレバ外相(ウクライナ)が中国で会い、中国からは「いち早く停戦のための交渉を行うべきであり、中国はその仲介を行う用意がある」とクレバ外相に持ち掛けたようですが、当のクレバ外相も、これまでとは違い、「まだ停戦協議のテーブルに就くには多くのハードルがあるが、戦争を長引かせることは好ましくない」との反応をしたそうで、「すこし変わったかな」という印象を受けましたが、「プーチン政権のロシアとはいかなる交渉も行わない」という法令の存在が障害になるだけでなく、ゼレンスキー大統領もバイデン大統領もどこかで「もう一度ロシアに対して大攻勢をかけて、ロシアの企てを挫く機会がある」と信じており、そのチャンスにかけてみたいという思惑が強いようで、そのトライの結果が出るまでは、ロシアと話し合う用意はないとの考えのようです。

ロシアについても、ペスコフ大統領府報道官が停戦協議に就く可能性について発言していますが、「ロシアはいつでも話し合いのための門戸を開いているが、それにウクライナが応じないだけ」と前向きともとれる発言をしつつも、「ロシアはゼレンスキー大統領を交渉相手とは見ていない」と大きなNOを突き付けていることもあり、実際にはまだロシアとウクライナが交渉のテーブルに就くのは随分先になりそうだと見ています。

しかし、もし他地域からの紛争の飛び火が及んでしまった場合には、予期せぬ暴発も予想され、さらに戦争・戦闘の当事者がロシアとウクライナ以外にも拡大した場合には(例えば、ロシアがバルト三国やモルドヴァに手出しをしたり、NATO加盟国がCoalition of the Willingでウクライナ側に参戦したりする事態)、周辺の紛争の火種を一気に起こし、相互に紛争が影響を与え合うという大変な事態に発展しかねません。

トランプならばウクライナ戦争を終わらせられるのか

ここにも皮肉にもアメリカの次期政権がどうなるかという要因が絡んできます。仮にハリス政権になった場合には、現在のバイデン政権の対応方針とさほど変化がないため、大きな変化は望みにくく、アメリカと欧州各国がロシア・ウクライナ戦争に積極的に関与してくることはないかと思われます(引き続き、軍事支援を淡々と続ける方向でしょうが、そう遠くないうちに、欧州諸国から次々と脱落国が出るものと予想します)。

仮にトランプ政権になった場合、トランプ氏は「就任から24時間以内に終わらせる」と景気のいいことを言っていますが、具体的にはどうするのかは明かしておらず、恐らく選挙戦のためのアピールに過ぎず、実際には何も考えておらず、考えていたとしても、それがウクライナにとって好ましい帰結ではないだろうと考えます。

ただ、これまでバイデン大統領がしてこなかった“アメリカによる直接仲介・調停”という選択肢は、直接にリーダーと会ってディールメイキングすることを好むトランプ氏であればやりかねず、そうなった場合には、何らかの“答え”が示されることになるかもしれません。

ただし、中東情勢がその時までに火を噴いていなければ、という大きなIFが付けられますが。

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