「富裕層優遇政策」が招いた消費低迷とデフレ不況
バブル期以降、日本の経済政策は「トリクルダウン」を採るようになりました。
トリクルダウンというのは、大企業や富裕層が潤えば、そのうち社会全体が潤うようになる、という経済思想です。
この「トリクルダウン」の思想により、国は富裕層にも大きな優遇制度を敷いたのです。
まず所得税を中心に富裕層の大減税を行ないました。
所得が1億円の人の場合、1980年では所得税率は75%でした。
しかし86年には70%に、87年には60%に、89年には50%に、そして現在は45%まで下げられたのです。
また住民税の税率も、高額所得者は18%だったものが、今は10%となっています。
かつて富裕層の所得税率が75%だったというと、「それは酷い」と思う人も多いかもしれません。
が、所得税率75%といっても、いろんな控除などがありますので、相当稼いでいる人でも実質的に50%以上になることはあまりありませんでした。
それに、日本は、富裕層に高い所得税率を課すことで、高度成長を成し遂げ、一億総中流と言われる国民全体が豊かな社会をつくりあげていたのです。
が、日本はバブル崩壊前後に、「富裕層に高い税を課す」ということをやめてしまったのです。
その結果、サラリーマンの給与が下がり続け、ワーキングプアが激増しているなかで、億万長者の資産ばかりが膨張するということになったのです。
このトリクルダウン政策が採られるようになってから、日本経済は長い低迷期に入っているのです。
少し分析すれば富裕層が優遇されることは、間違いなく経済を停滞させることがわかるはずです。
なぜなら、富裕層は、もともと十分な消費生活をしているのだから、それ以上、収入が増えてもなかなか消費には回らず、貯蓄や金融商品に回ってしまいます。
一方、中間層以下は収入が減れば、たちまち消費が減ります。消費が減れば物が売れないので、物の値段は下がりデフレとなるのです。
これは、少し考えれば、誰にでもわかる理屈です。
そして、理屈だけじゃなく、現実もその通りになっています。
日本が富裕層優遇政策を採り始めたころから、消費は低迷し、デフレ不況となりました。
これは、「富裕層にお金を回しても消費には行かず貯蓄が増えるだけ」という理屈がそのまま現実になっているのです。
富裕層の負担を減らし中間層以下の負担を増やす
↓
富裕層の貯蓄は増えるが国全体の消費は減る
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企業は売上を維持するため価格を下げる
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デフレ、不景気になる
昨今になって、政治家もようやくそのことに気付き、安倍元首相くらいから「賃金アップ」を財界に働きかけたりしています。
が、それ以前の富裕層優遇措置が効きすぎており、ちょっとやそっと賃金アップをしたくらいでは、とてもデフレや格差社会は解消しないのです。
近年では生活保護受給者も激増し、貧困家庭も増え、まともに食事をとれない子供がかなりいます。
しかも信じられない事に、現在、日本の大学生の約半分は、有利子の奨学金を使っているのです。
奨学金とは名ばかりで、要は借金です。
つまり、日本の大学生の半分は、借金をしなければ大学に通えない状態なのです。
少子化で少なくなったはずの子供の学業さえ、満足に支えられない。にもかかわらず、億万長者はますます富を増やしている。
「トリクルダウン政策」がそういう日本を作り出したのです。
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