「社会的責任」を果たさぬ大企業を待つ暗い未来
政治家や財界の人たち、特にトヨタの首脳陣は、よく考えてほしいものです。
近年の日本は、「国際競争力」を旗印にし、大企業の業績を優先させる経済政策を行なってきました。
その結果、低所得者が増え、子供の数は減り、その少ない子供の教育さえままならない社会をつくってしまったのです。
しかし、それは少し長い目で見れば「国際競争力」を大きく損なっているのです。
戦後の日本の繁栄は、勤勉で優秀な勤労者が作り上げてきたものです。
今の日本には、勤勉で優秀な勤労者を育てる土壌が急激に失われています。
従業員の待遇を削って企業の業績を上げるのは簡単です。
安い賃金で、メチャクチャにコキ使えば、企業の経営効率が上がるのは当たり前です。
でも、それでは、企業は社会的責任を果たしていません。
「企業は株主のもの、だから株主が儲かるようにするべきで、社員のことは考えなくていい」などという経済評論家などもいますが、それは世間知らずというものです。
企業が事業を成功させることは、その企業だけの力では絶対にできない事です。
企業というのは、国の資源を使っているのです。
日本の企業というものは「産業のインフラ」「治安のいい社会」「高い教育を受けた人材」などがあって、世界で活躍できているのです。
これらの“国の資源”は、国が企業のために整えたものではありません。
国民のために整えたものです。
国民生活が豊かになるために、国はそういう環境を整えたはずなのです。
企業は、その国民の資源を使わせてもらっているのだから、相応の対価を支払うべきです。
また企業が、社会的な責任を果たさなければ、いずれは企業自体に報いがきます。
企業が賃金も雇用も増やさず、儲けたお金を社会にまったく還元しなかったら、どうなるでしょうか?
派遣社員ばかりが増え、若い人が家庭を持つことさえ覚束なくなったらどうなるでしょうか?
若い人の収入が減り、子供が減っていく社会というのは、企業にとっては顧客が減っていく社会でもあります。
また人材が枯渇していく社会でもあります。
そういう社会になってしまえば、やがて企業も枯れていくのです。
このメルマガでも触れましたが、2021年にはトヨタのカムリの開発者責任者が、中国の自動車メーカー「広州汽車集団」に引き抜かれました。
カムリは、アメリカでもっとも売れていた車であり、トヨタの海外戦略のもっとも重要と言える車でした。
カムリの開発責任者に限らず、バブル崩壊以降、日本の技術者たちは、中国や韓国などの企業にガンガン引き抜かれています。
昨今の日本企業の苦戦は、人材の引き抜きが大きな要因ともなっているのです。
【関連】トヨタという“日本の病巣”を国税OBが告発! 株価以外すべて破壊「日本人の給料を下げ続けたトヨタ」失われた30年の真実
企業は、社員が安心して暮らしていけるだけの雇用を守り賃金を払う。
それが真に永続的に企業が発展していくために必要不可欠なことです。
バブル崩壊以降の日本企業は、この最低限度必要なことをしてきませんでした。
日本企業は今すぐにでも、これをやらなければなりません。
今、何も手を打たなければ、少子高齢化や低所得者層拡大は、どんどん進んでいきます。
今のように、目先の業績だけを追い求めていると、じり貧は避けられないのです。
そして、その先に行きつくのは、少子高齢化で身動きが出来なくなった暗澹たる日本社会です。
これ以上、少子高齢化が進めば、日本は活力のない老人国家になってしまいます。
そうなればトヨタなどの大企業も、破滅するか、外国人に買い取られるしかなくなるのです。
(メルマガ『大村大次郎の本音で役に立つ税金情報』2024年7月16日、8月1日号より一部抜粋。全文はご登録の上お楽しみください。初月無料です)
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