アメリカの駐日大使が何よりも問題視したこと
ここまで反発されても、自分の判断を変えなかった鈴木史朗市長は、最後まで「決して政治的な理由でイスラエルを招待しないわけではなく、平穏かつ厳粛な雰囲気の下で式典を円滑に実施したいという理由だ。苦渋の決断であったが、そういう考えで決定した。判断に変更はない」というタテマエを述べていました。実はこれ、2年前に岸田文雄首相がロシアとベラルーシを招待国から除外した時の理由の丸パクリなんですけどね(笑)。
しかし今回、アメリカのエマニュエル駐日大使が何よりも問題視したのは、鈴木市長がイスラエルを招待しなかった一方で、パレスチナを招待した点でした。「反イスラエル、親パレスチナ」では、完全にアメリカの敵国になってしまうからです。ちなみに、駐日パレスチナ常駐総代表部は広島の式典に招待されなかったことについて「ダブルスタンダードだ」と広島市を批判しましたが、広島市は「日本に大使館のある国にのみ招待状を送っている」と回答しています。
でも、そうであれば、日本に大使館のあるロシアやベラルーシに広島市が招待状を送らなかったのは、何故なのでしょうか?ちなみに、長崎市も送っていません。これは、岸田首相による「ロシアとベラルーシは平和式典には招待しない」という2年前の判断によるものです。
2022年2月、ロシアがウクライナに軍事侵攻したことで、アメリカを始め西側諸国は一体となり、ロシアへの批判とウクライナへの支援を開始しました。そして、日本も右へ倣えでアメリカに従いました。2023年6月、バイデン大統領は演説の中で「日本がウクライナへ多くの支援金を搬出しているのは、私が日本のリーダーに強く働きかけたからだ」と自分の手柄をアピールしました。
そして、バイデン大統領による岸田首相への働きかけの中に、これも含まれていたのか、岸田首相は2022年、広島と長崎の平和式典にロシアとベラルーシを招待しないようにと、外務省を通じて両市の市長に指示をしたのです。岸田首相のように「検討」ばかりで決断力が皆無の人物が、果たして自分の判断だけでロシアとベラルーシを除外するようなマネができるでしょうか?すでに外務省が両市に指示をしたことは既報ですが、あたしはその前にバイデン大統領から岸田首相への指示があったと推測しています。
日本が広島と長崎の平和式典にロシアとベラルーシを招待せず、その一方でイスラエルを招待すれば、ロシアにダメージを与えるだけでなく、アメリカが支援しているイスラエルによるガザでの大虐殺を正当化することに繋がるからです。多くの国々から批判されているイスラエルの戦争犯罪に、広島と長崎の平和式典というオブラートを被せることで、イスラエルを支援し続けるアメリカへの批判を一定レベルで鎮静化することができるとでも考えたのでしょう。
広島の式典の中継で、NHKがイスラエルのコーヘン駐日大使の顔をずっと映していたのも、「平和の式典に出席しているイスラエル大使」という画(え)を流すようにと、政府からの要請があったのかもしれません。中立公正が基本のNHKが、その場の判断だけであのような特異な映像を流すとは思えません。あたしは岸田政権からNHKに何らかの圧力があったと見ています。
そして、広島市は「ロシアとベラルーシは招待せず、その一方でイスラエルは招待する」という岸田政権の望んだ通りの式典を行ない、「ロシアがウクライナに対してやっていることと、イスラエルがパレスチナに対してやっていることは、まったく違う」というアメリカの思い通りの演出に加担させられました。そして、広島市は複数の国々から「ダブルスタンダードだ」と批判されました。
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