岸田首相は去年の原稿を使い回したような内容を棒読み
しかし、長崎市は違いました。ロシアとベラルーシを招待できない以上、ロシアと同じことをしているイスラエルも招待すべきでないと判断したのです。「ダブルスタンダードか否か」という観点だけで比較すれば、長崎市のほうが正しい判断です。しかし、これは長崎市の本意ではないのです。そして、広島市の本意でもありませんでした。
本当なら、広島市も長崎市も、ロシアにもベラルーシにもイスラエルにもパレスチナにも招待状を送り、戦争している当事国がすべて参加した状態で、真の平和を訴えたかったのです。広島や長崎の平和の式典は、戦争加害国を吊し上げる場でもなければ、核兵器を使用したアメリカを非難する場でもありません。核兵器の恐ろしさ、戦争の残虐さを再確認し、二度と広島や長崎のような不幸を繰り返さないために、各国が平和への意識を共有するための場なのです。
2年前の2022年、岸田首相が広島と長崎の平和式典からのロシアとベラルーシの排除を指示し、両市の市長が受け入れざるを得なかった時、ロシアのガルージン駐日大使は公式SNSで「とても恥ずべき措置である。平和式典の主催者は拒絶を選択した」と厳しく非難しました。そして、ガルージン駐日大使は、広島の式典の2日前の8月4日、広島市の平和記念公園を訪れ、原爆死没者慰霊碑に参拝、献花したのです。
ロシアと同じく式典への招待を見送られたベラルーシのイエシン駐日大使は、ひと足早く7月21日に広島市を訪れ、平和記念公園の原爆死没者慰霊碑に参拝、献花しました。そして、イエシン駐日大使は「ベラルーシへの招待中止は極めて残念だ」と述べました。
岸田首相は、おそらく今年で最後になるであろう広島と長崎の式典で、ほとんど自分の言葉は使わずに、まるで去年の原稿をそのまま使い回したような内容を棒読みしました。相変わらず「核兵器のない世界の実現に向けて努力を着実に積み重ねて行くことは、唯一の戦争被爆国である我が国の使命です。核軍縮に向けた国際社会の機運を高めるべく、国際社会を主導してまいります」などと繰り返しましたが、広島市の松井一実市長からの「核兵器のない世界の実現に向けた現実的な取組として、まずは来年3月に開催される核兵器禁止条約の第3回締約国会議にオブザーバー参加し、一刻も早く締約国となっていただきたい」という呼びかけに対しては、完全スルーでした。
自分で「唯一の戦争被爆国である我が国」と言っておきながら、核兵器禁止条約を批准せずにオブザーバー参加すらしない岸田首相。すでにオーストラリア、スウェーデン、フィンランドを始めとしたアメリカの同盟国や、ドイツ、オランダ、ノルウェー、ベルギーを始めとしたNATO加盟国の多くが、核の抑止力に頼りながらもオブザーバー参加しているのに、アメリカの顔色をうかがってオブザーバー参加から逃げ続けている岸田首相。ああ情けない。
こんな人物が、一体どのクチで「核軍縮に向けて国際社会を主導してまいります」などと言っているでしょうか?そもそも岸田首相は、あたしと同じく東京の渋谷区で生まれ育った生粋の東京っ子で、選挙の時に現金をバラ撒いて票集めする時しか広島へは行きません。もともと広島に対する思い入れなど1ミリも持ち合わせていないのです。
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