元KGBの諜報員が暴露。なぜウクライナ軍はロシア領で快進撃を続けられるのか?

 

ロシア軍が越境攻撃にも「わざと動かなかった」ロジック

さて、フランスに亡命した元KGBの諜報員セルゲイ・ジルノフさんは、非常に興味深い話をしています。

ロシア国防省、ロシア軍の幹部が次々と逮捕されている。この状況は、ショイグ国防相の下で「汚職天国」だったロシア軍幹部にとって、「許しがたい状況」なのだそうです。彼らにとって、収入源(汚職)を絶たれるだけでなく、逮捕されるわけですから。まさに「天国から地獄に落ちる」状況。

ジルノフさんによると、ロシア国防省、ロシア軍幹部は、この件でうらみを抱いた。誰に?汚職の捜査をしている連邦保安局(FSB)に。それで、今回ウクライナ軍がロシア領内に進軍してきたとき、わざと動かなかった。これは、どういうロジックなのでしょうか?

ロシアの国境警備を担当する国境局は、FSBの一部なのです。

プーチンは、ウクライナ戦争を「戦争」と呼ぶことを禁じ、「特別軍事作戦」と呼ばせています。そして、ロシア領内に侵入してきたウクライナ正規軍は、「テロリスト扱い」なのです。

では、誰がテロリストを掃討するのでしょうか?これは、FSBの「憲法体制擁護・テロ対策局」なのです。しかし、FSBにウクライナ軍を倒すことができるでしょうか?もちろん無理でしょう。

ロシア国防省、軍は、ロシア領内に侵入してきたウクライナ軍とまじめに戦わないことで、何を求めているのでしょうか?

「FSBよ。おまえたちは、ウクライナ軍を撃退できるのか?俺たち(軍)にウクライナ軍を撃退して欲しいのなら、俺たちの利権(汚職)に手を出すのはやめろ!」

と。こんな感じで、プーチンの下で、ロシア国防省・ロシア軍とFSBの抗争が勃発しているというのが、セルゲイ・ジルノフの見解です。

それで、ロシアでクーデターが起きるとすれば、「ロシア軍の可能性が高くなっている」ということなのでしょう。

外からは盤石に見えるプーチン政権。しかし、今年に入ってから、「事実上のナンバー2」と言われていたパトルシェフ安全保障会議書記が失脚したり、いろいろ動きがあります。

中の動きが全部見えるわけではありませんが、はっきりしているのは、「みんな、バカな戦争をはじめたプーチンを恨んでいる」ということです。

独裁政権は、ある日突然倒れる。そして直前まで、「盤石だ」と思われているものです。それは、独裁政権の内部で起こっていることが、外から見えないからでしょう。

プーチン政権は、みんなが思っているほど盤石ではありません。

(無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』2024年8月18日号より一部抜粋)

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【著者】 北野幸伯 【発行周期】 不定期

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